表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げ出した勇者と魔王  作者: たむーん
1/7

プロローグ

「魔物だぁ!奴らが攻めてきたぞぉおお!」

街の見張り役が魔物の気配を察知し、大きな声で叫んだ。

ガサガサ、サッサッサ。

何かが近づいてくる音が聞こえる。

「門を閉めろ!急げぇ!!」

街の人々は大きくて重い門を閉めていた。

橋の向こうから赤くて丸いぷよぷよしたものと、真っ赤な目で睨みつける緑色の生物が走ってきた。

「もうちょっとだ!頑張れぇえ!」

人々は門を閉じることに成功した。

安心するのも束の間、門はジュジュッと音を鳴らしながら溶けてきた。そして鉄の門は小さな穴があき、そこから赤く透明なものが入り込んで来た。

「逃げろ!門から離れろぉお!俺が抑えるからみんな逃げろ!」

門番は槍を透明なものに突き刺した。

が、槍は吸収されるように溶けていってしまった。

「な、なんだと!お、俺の槍がぁ!」

門番が驚いている間も門の穴は広がっていく。

そして大きな穴から魔物は入り込んできた。

「う、うわぁ!!たすけてくれぇえ!」

腰を抜かし、恐怖で体が震えている門番に迫る魔物。

「あ、俺死んだ。」

ぼそっと誰にも聞こえないような声で呟いた。

「いや!まださ!大丈夫だ。俺がなんとかする。」

そこに黒いフードを着た、人が走ってきた。

そして、「消えろ!」

と手を横に振りながらそいつは叫んだ。

すると門番に襲い掛かろうとした魔物は動きを遅くし、体がボロボロになって崩れていった。

「皆さん、遅くなってすみません。魔物は消滅しました。安心してください。」

フードを取った男の人はそう言った。

逃げ隠れていた街の人は出てきて、みんな喜び合っていた。

「あ、ありがとうございます。もうちょっとで死んだと思いました。命の恩人です。」

門番は泣きながら言ってきた。

「間に合って良かったです。」

「お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」

名前を聞かれた瞬間男は一瞬怯えるように見えた。

「名前はシウス、『1』です。」

それを聞いた瞬間門番以外の街の人々はこっちを見てきた。

「『1』...。」

誰かが呟く。

「助けてもらったのは嬉しいんだが、『1』のくせに...。」

「もっと早く来いよ...。」

「はぁ。」

街の人々はシウスを見ながら言った。

「何のための『1』なのよ!」

「俺たちの命の危機だったんだぞ!」

「そうだそうだ!」

「もっと早く来い!」

助けてもらった身なのに街の人々は不満を口にする。

「はぁ...。」

シウスはため息を付く。

門番は何が何だがさっぱりでオロオロしていた。

「門番さん、貴方を助けることができて良かったです。では。」

そう言いシウスはフードを被り、溶けた門をくぐり森の方へ行ってしまった。

門番は最後まで分からないまま、シウスの背を見ていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ