プロローグ
「魔物だぁ!奴らが攻めてきたぞぉおお!」
街の見張り役が魔物の気配を察知し、大きな声で叫んだ。
ガサガサ、サッサッサ。
何かが近づいてくる音が聞こえる。
「門を閉めろ!急げぇ!!」
街の人々は大きくて重い門を閉めていた。
橋の向こうから赤くて丸いぷよぷよしたものと、真っ赤な目で睨みつける緑色の生物が走ってきた。
「もうちょっとだ!頑張れぇえ!」
人々は門を閉じることに成功した。
安心するのも束の間、門はジュジュッと音を鳴らしながら溶けてきた。そして鉄の門は小さな穴があき、そこから赤く透明なものが入り込んで来た。
「逃げろ!門から離れろぉお!俺が抑えるからみんな逃げろ!」
門番は槍を透明なものに突き刺した。
が、槍は吸収されるように溶けていってしまった。
「な、なんだと!お、俺の槍がぁ!」
門番が驚いている間も門の穴は広がっていく。
そして大きな穴から魔物は入り込んできた。
「う、うわぁ!!たすけてくれぇえ!」
腰を抜かし、恐怖で体が震えている門番に迫る魔物。
「あ、俺死んだ。」
ぼそっと誰にも聞こえないような声で呟いた。
「いや!まださ!大丈夫だ。俺がなんとかする。」
そこに黒いフードを着た、人が走ってきた。
そして、「消えろ!」
と手を横に振りながらそいつは叫んだ。
すると門番に襲い掛かろうとした魔物は動きを遅くし、体がボロボロになって崩れていった。
「皆さん、遅くなってすみません。魔物は消滅しました。安心してください。」
フードを取った男の人はそう言った。
逃げ隠れていた街の人は出てきて、みんな喜び合っていた。
「あ、ありがとうございます。もうちょっとで死んだと思いました。命の恩人です。」
門番は泣きながら言ってきた。
「間に合って良かったです。」
「お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
名前を聞かれた瞬間男は一瞬怯えるように見えた。
「名前はシウス、『1』です。」
それを聞いた瞬間門番以外の街の人々はこっちを見てきた。
「『1』...。」
誰かが呟く。
「助けてもらったのは嬉しいんだが、『1』のくせに...。」
「もっと早く来いよ...。」
「はぁ。」
街の人々はシウスを見ながら言った。
「何のための『1』なのよ!」
「俺たちの命の危機だったんだぞ!」
「そうだそうだ!」
「もっと早く来い!」
助けてもらった身なのに街の人々は不満を口にする。
「はぁ...。」
シウスはため息を付く。
門番は何が何だがさっぱりでオロオロしていた。
「門番さん、貴方を助けることができて良かったです。では。」
そう言いシウスはフードを被り、溶けた門をくぐり森の方へ行ってしまった。
門番は最後まで分からないまま、シウスの背を見ていた。