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P.00:プロローグ

神様物語製作企画:第一弾

 日本の大都市、名古屋――。


 その上空を、無数の飛行物体が漂っている。大空はまるで他のものの存在を否定するように、真っさらな青き大地を晒している。普段はそこに浮かんでいるはずの、純白の旅人さえ存在することのない純粋な空間が、そこには広がっていた……。

 しかし、雲一つない大空には黒い影が浮かんでいる。その姿を見た誰もが口々に「飛行機だ!」と叫ぶことだろう。確かにそれは「飛行機」だ。胴体があり、両翼があり、鮮やかな直線を描いて邪魔者のいない大空を滑っている。


 遊んでいる子供たちがその姿を一度見ると、両手を振りながら笑顔を抱く。自由に、自分自身は行くことのできない場所で飛び回れるそれに、誰もが憧れるものだ。

 実質、空間を切り裂き、己がみちを自在に突き進むというのは気持ちのよいものなのだろう。

 大人たちもそんな子供たちを見て微笑みを称えていた。子供の笑顔というものは、何故だか安らぎを与えてくれる。しかし、大人たちには子供たちが何を見て喜んでいるのかがわからない。しきりに天を仰いで笑顔を作っている子供たちにつられ、皆が空を見上げた…………。


 そして、地上が陰影と光明に包まれた――。



 ちっぽけな、世界大戦の敗戦国にもかかわらず、今や世界経済の一端を担っている島国――日本。しかし、日本全体が経済都市として華々しく着飾っているわけではない。

 ここは東方地方、秋田県、由利本荘区……広がる山々、広大な田園風景。まさに大自然といった感じの光景は、経済成長という言葉から忘れ去られていった印象を受ける。



「わかったな、緊急事態だ」

 白髪交じりの頭髪を一度撫で、鋭い眼が光った。50歳後半の男だったが、少し太めでしっかりした体格からは、見た者が威圧の受ける風格をかもし出している。どっしりと椅子に座りながら、執務机を挟んだ反対側の少女に指令を出していたようだ。

「わかりました、総長マスター。至急、首相送迎の準備をさせます……」

 指令を受けたのは少女だった――。

 擱岾おくやま 神瀞かみか。彼女はそれだけ報告すると、総長と呼んだ男に一礼をし、足早に室外へと出て行ってしまった。


 神瀞が去った後も、室内の暗さは変わらない。窓から差す斜線状の直線的な光のみが、その部屋をどうにか照らしているようだった。

「立て続けに起こる空爆、テロの脅威……」

 ――“総長マスター”……。

 神瀞に呼ばれたその声は、今でも男の胸の内に反芻はんすうしていた。うら若き少女が、上官にそのような軍人まがいの敬称で呼ばなくてはならない時代になってしまった。

「ふぅ。17歳の少女には……厳しい役だろうな…………」

 室内に響く声は、先ほどのような総長としての声色ではなく、若き世代を心配する1人の老人のものだった。



 時は2034年。日本はテロと核の恐怖に怯えていた。

 そして今、不条理に振り回されていく世界の中で、少年たちの戦いは幕を開けようとしていた。



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