りんけーじ89 深海の生き物
りんけーじ89 深海の生き物
「あら、あの光は何かしら?」鈴乃が海上に向かって指を上げた。
「!?」俺とヴァールは鈴乃が指差した方を見た。
確かにかなり上の方で、ボワッと光が輝いた。
「何でしょうか?」ヴァールは訝しげに、眼を細めて俺の後ろに隠れた。
「海のものかも知れないっぽ!」ローリィは、愉快気に言うと、体を発光させた。
「深い海の中は食うか食われるかの世界っぽ、食うものも、食われるものも、みんな光
を利用しているっぽ!」
「ふーん、みんな生きるのに必死なのね!」鈴乃は腕を組んだ。
「食うものは、光で獲物を寄せ集め、片や食われるものは、光を目くらましやオトリにして逃げるっぽ!みんな賢いっぽ!」ローリィは、ウンウンと頷いた。
「暗闇の中で生活する生物にとっては、発光するというのは、かなりの武器なんだろうな」
俺もローリィに同調した。
ヴァールは「へーっ、じゃあ私もやってみよう!」と言うと、体をぼうっと青白く発光させた。
「ほーっ!お前も光れるっぽ!」ローリィは目をまん丸に見開いた。
「わたしも、この杖で…ルークス!」鈴乃が杖を掲げると、先端が明るく輝いた。
「しかし、わたしたち相当深い海の中にいるのよね?」鈴乃は杖で辺りを翳した。
「そうだっぽ、この国の一番高い山の高さより深い所にいるっぽ」ローリィは、面白そうに答えた。
「そ、そんな深度じゃ、普通は水圧でぺちゃんこだわ!!」鈴乃は震えあがった。
「だって、あんたば、マリス様に力を授けてもらったっぽ」ローリィは、鈴乃の頬っぺたをムニムニと両手でつかんだ。
「ふひあふにはへはふふほうひ?(水圧に耐えられるように?)」鈴乃はローリィに尋ねた。
ローリィは頷いた。
そうこう鈴乃とローリィがじゃれ合っているうちに、突然大きな影が近づいてきた。
「し、深海の巨大生物です!きっと、凄い牙をした、怪物に違いないです!わたしたち、食べられてしまいます!」ヴァールは、顔を真っ赤にして、ポカポカと俺の背中を叩いた。
闘いになるか?俺は剣に手を掛けた。
その時聞きなれた声が聞こえた「おーい!鈴乃たちかー?」
「誰!?」鈴乃は杖を、構えた。
「われじゃー、凜じゃー、これはえるじゃー、あかねもいるぞー」凜とあかねがえるの背中から手を振っていた。
みんな無事だったのか..俺はほっと胸をなでおろした。
「もう、なにやってたのよー!心配しちゃったじゃない!」鈴乃も目に涙を浮かべていた。
「みなさん、よくご無事でー」ヴァールも体を一層輝かせ無事を喜んだ。
「そちらも、皆さん元気そうですねー」あかねの元気そうな声が返ってきた。




