りんけーじ87 謎の敵
りんけーじ87 謎の敵
えるは、意識が薄れゆく中、再び少女の事を思い出した。
暗闇の中、少女は悲しそうな顔をしながら、えるの手を掴んだ「…ッテ」
少女が何かを言っている。
「何?」えるは聞き返した。
「ドラゴンサン」少女はえるを見つめる。
「ドラゴンサン、メヲサマシテ!ワタシヲマモッテ!」
その瞬間えるは、はっと我に返った。
体が、深淵部に向け下降しているのが判った。ますたーとあかねは!?
どうやら、2人共えるの魔力で背中に乗っている「はあ、よかった」。
しかし、強力な一撃を加えたものは何だったんだろう?
えるは体勢を立て直し、翼をはためかせた。
周囲を見回すと、漆黒の闇が広がっていた。
まだ、敵は近くにいる!えるは、センサーで何者かの気配を感じ取った。
「!?」二つの光が突然現れた。
「来るっ!!」えるは、邪悪な気配を感じ、咄嗟に体を反転させた。
と、同時に物凄い水圧が真横を通り過ぎていった。
「っ痛!」えるは尾に痛みを感じた。見ると鋭利な刃物で切られた様な傷口から、煙の様に血が広がっていた。
クソッ!何者だ。えるは二つの光に意識を集中した。
「える!後ろ」その時、誰かの声が響いた。
えるは、声に反応し、体を素早く一回転させた。
間一髪、大きなものが体をかすめた。
「ますたー」えるは声を掛けた。
声の主は凜だった。
「大丈夫ですか」えるは凜を心配した。
「何のこれしき、大丈夫じゃ!われはドラゴンライダーじゃ」凜はポンと胸を叩いた。
「お主の眼となり、耳となろう」
「あかねは、どうですか?」えるは凜にあかねの様子を尋ねた。
「えるちゃん、心配ないよ」あかねの元気な声が返ってきた。
「それより、さっきから、戦っているやつは何?」あかねは、膨大な暗黒を見回した。
「わからない」えるは周囲を警戒する。
「える、左後方じゃ!近いぞ」凜が叫ぶ。
「はっ?」気配を消して、突然現れた敵に背後を突かれた。
「やられるっ!」咄嗟に反転して攻撃をかわそうとしたが間に合わない。
「デーフェーンシオー!」あかねが叫ぶと同時に、バリバリとシールドがえるの左側に
展開された。
ガガガガと、巨大何かが、シールドに接触し眩い火花が散った。
「ああ!何あれ?」あかねは驚愕の声を上げた。
シールドの光に照らされたのは、鋭い槍の様な武器だった。槍は触手の様なものにつながっており、その先には、巨大な口に山の様に並ぶ鋭い牙を持つサメの様な魔獣だった。
「イーヴィル・ピストリス!」えるは、ついに正体を掴んだ。




