りんけーじ85 ローレライ
りんけーじ85 ローレライ
えるは、凜とあかねを乗せ、物凄い勢いで水中を移動していたが「やっぱり、空の方が動き易いですね、ますたー、あかね、しっかり摑まっていて下さいね!」と言うと、水面に浮上し、そのまま大空に飛び上がった。
「ひゃー!凄い迫力!!」あかねは、水飛沫を上げながら上昇して行くえるの巨体見た。
もちろん、凜やあかねは、えるの作った、全体を包み込むキャノピーの様な障壁に守れており、衝撃を受ける事はない。
「場所が分かった以上こっちの方が速く到着できます」えるはテレパシーで伝えてきた。
あかねに一つ疑問が沸いた「えるちゃん、聞いてもいい?」
「何?あかね」えるが首を傾けた。
「ドラゴンの千里眼があれば、スフフシェルも、それで探せばすぐに見つかるんじゃない?」
「…」えるは黙った。
そして、口を開いた「実は、わたしも、探してみたんだけど、何回やっても、見つからないの」
「どうして、見つからんのじゃ?」凜が髪をたくし上げた。
「わかりません、スフフシェルを念じてみるんですが、あと少しのところで、霧の様に霞んでしまうんです」えるは悔しそうに言った。
「ふ~む、不思議な事もあるもんじゃ」凜は瞳を閉じ腕を組んだ。
「地竜にとって、海は得意分野じゃないのかもね」あかねは想像した。
「そうかもしれない」えるは翼をはためかせた。
えるは、凄い勢いで空を滑る様に移動する。雲間を抜け、眼下に広がるキラキラ光る海に小さい船が航行しているのが見えた。
「もう少し、飛びますよ」えるは方向を少し左側に修正した。
―――その頃、鈴乃達は―――
「一体どこらへんなのかしらね?」鈴乃は、くるっと一回転して辺りを見回した。
「?」俺は、肩をすぼめて両手を上げた。そもそも、もう一つの世界それも、海底だ見当もつかない。日光も届かない様なところだから、海面までは、結構有りそうだ。
「え、円正寺くん」鈴乃の声が引きつっている。
「何?」俺は鈴乃を見た。
「あ、あれ…」鈴乃は一点を指差した。
鈴乃の指差した方向には、ぼうっと光るものがあった。
暫く2人で凝視していると、その光はこちらに向かって、近づいてきた。
「ぎゃっ!近づいて来る」鈴乃は俺の影に隠れた「あ、あんた!何とかしなさいよ、男でしょ」
「俺は今、心は男でも、体は正真正銘女性、幼気な少女なんですけど」俺は反論した。
「もう、どうでもいいから、何とかして」鈴乃は俺にしがみ付くと小刻みに震えた。
「鈴乃さんも、魔法少女の力があるんじゃないですかー、魔法の杖を出して撃退すればいいじゃないですかー」俺はチラリと鈴乃を見た。
「あ、ああいうのは苦手なの」鈴乃は俺の背中に頭を押しつけた。
「もー!しょうがないなー」俺は、久々にベルシフォードの剣をドラゴンの袋から取り出すと、近づいて来る光の方に構えた。
「は、早く追い払ってよ」鈴乃が後ろから、グイグイ押す。
剣に力を込めると、青白い電光が輝き始めた。
じゃあ、追い払うか、俺は剣を上に振り上げ叫んだ「ゴッド!」
「待って!」と、その時光の方からヴァールの声がした。
「ヴァール!?」俺は、構えるのを止めた。
光の中から、ヴァールが現れた「そうです!」
「何で、ヴァールが光ってんのよ!」鈴乃も状況を把握したらしく、俺の肩越しに顔を覗かせた。
「わたしが、光っているんじゃないです」ヴァールの横を見ると、光っているのは少女だった。
緑色髪の毛は長く、海の様に青い瞳をして、胸は…「おおっ!」貝殻ビキニ!おへその下は、ウロコに覆われていて、足は…尾びれ?これって…
「他のメンバーを探して泳いでいたら、この人に会ったんです」ヴァールは、少女の方を見た。
「おら、ローレライって、言いうっぽ。見ての通り人魚族だぎゃ」ローレライと名乗る少女は独特のイントネーションだが何とも言えない愛くるしい声で答えた。
―――ローレライの歌―――その声を聞いて、俺は思い出した。
「ローリィって、呼んでいいっぽ」ローレライは、にっこりとほほ笑んだ。
「ローリィは、海の中に詳しいから、海の中を案内してくれるそうですよ」ヴァールは、少女に俺たちを紹介した「こちらが、わたしたちのボス、鈴乃さんです、そして、こちらが、今は女の子だけど、男の子の円正寺さんです」
「ふ~ん、あんだが、スフフシェルをさがしてるっぽ」ローリィは答えた。
「ああ、本来の姿にもどるためにね」俺は、腰に手を当てた。
「は~、んでも~、あんだば、女の子でめんこいから、今のままでいいっぽ」ローリィは、俺の顔をまじまじと見つめた。
「わたしも、そう思うのよね」鈴乃が同意した。
「ほ~。あんだば、気が強そうだガラ、男の方がいいっぽ」ローリィが鈴乃を見て言った。
「うるさい!わたしはれっきとしたオ・ン・ナ・ノ・コですっ!これでも、結構男子から人気があるんだからねっ!ね~、円正寺くん」鈴乃は俺に同意を求めた。
「へ~、そううなんだ~」俺は受け流した。
「あははは、面白いっぽ」ローリィは、愉快そうに笑った。




