りんけーじ82 リヴァイアサンの咆哮
りんけーじ82 リヴァイアサンの咆哮
「えへへへ」目の前をあかねがくるくると回転しながら気持ちよさそうに魚を引き連れて横切っていく。水の中は、地上とは違い360度動ける。
俺は、海の中を漂ってみた。魚ってこうやって呼吸しているんだな、海の中にさすキラキラと光る日差しを見ながら不思議な感覚を覚えた。
鈴乃がふわっと現れた「円正寺君も慣れた様ね、それにしても何も使わず、水中で呼吸できるのは便利ね」
「あれ、何で水の中なのに会話できるんだ?」鈴乃の声がはっきり聞こえる。
「わたしも不思議に思ってマリスに聞いてみたんだけど、多分クジラやイルカの会話に似たものらしいわ」鈴乃がくるっと回転してみせた。
「へー、そうなのか」マリスの能力は凄いな、俺は感心した。
「ところで、みんなでスフフシェル探しに行くんはええんやけど、満月の夜やないと、意味あらへんのを知ってるんか? 」マリスが言った。
「…」みんなあっけにとられた。
「はー」マリスは頭をかいてため息を吐いた「あんなー、あんた方そんなんで、よく海ん中来たなー」
「何でわらわが、急に誘ったと思ってるんや」
「さあ?とんとわからん。なあ、える」凜がえるを見た。
「はい」エルは屈託のない笑顔で答えた。
「満月は3日後やで、だから誘ったんや」マリスが答えた。
「うう、なんか気持ち悪い…」ヴァールがよろよろと漂ってきたかと思うと俺の腕にしがみ付いた。ヴァールのひんやりとした柔らかい胸の感触が俺の二の腕に伝わった。
恥ずかしいやら、うれしいやら俺の心拍は上がった。
そんな俺を鈴乃は横目でチラリと一瞥した「スケベ」。
俺は、はっと我に返った。そう言えば、海の中は絶えず波でユラユラと揺れ動いているので、ちょっと、その動きに酔って、気持ち悪くなっていた。
船酔いの時は、遠くを見るといいと何かで聞いていたのを思い出し「ヴァール、遠くを見ながら深呼吸して気持ちを落ち着かせるんだ」とヴァールに優しく言った。
「あ、あい」気分の悪そうなヴァールは、視線を遠くに向けた。
はーっと、深呼吸すると、腕に押し付けられた胸の動きが感じられた。
き、気持ちイイーと心の中で叫んでしまった。
じろじろと見ている鈴乃に悟られまいと、俺は表面上、平静を装った。
しかし、女の直感は鋭く鈴乃は再び「スケベ!」と呟いた。
「あれ?」遠くの方を見ていたヴァールはそう言うと目を擦った。
「どうしたんだ?」俺は、ヴァールに尋ねた。
「何か、向こうの方…遠くの方なんですが、一か所だけ景色がモヤモヤしてよくみえないんです」ヴァールは指をさした。
ヴァールの言っている方を見ると、確かに一か所だけ水が霞んで良く見えないところがある。まるで海水と淡水が入り混じるところの様に…「何だあれ?」
見る見る内にモヤモヤは大きくなり、こちらに近づいて来る。
「気を付けるんや!あれは、深海で起こる、非常に強力な流れでリヴァイアサンの咆哮、言うんや、あれに巻き込まれたらどこに飛ばされるかわからへんのや!」」マリスが叫んだ。
あっと言う間にもやもやは、俺たちを飲み込むと急に激しい潮流が来た。
「円正寺くん、助けて!」潮流に飲み込まれる瞬間、手を伸ばした鈴乃の指先を何とか絡み取ると、ヴァールと3人でお互いを庇い合う様に抱き合った。と、同時に俺たちは上下左右もわからなくなり、リヴァイアサンの咆哮の中で激しく回転した。
「あああ~」誰かが叫んだあかねか?凜か?
「みんな!大丈夫か~?」もみくちゃにされながら俺は叫んだ。




