りんけーじ8 部室
りんけーじ8 部室
次の日の放課後、帰ろうと教室を出ると、鈴乃がいた。
「円正寺君、何をやってるの?これから部活に行くわよ。わたしに着いてきなさい!」と、言うと、どんどん先に行ってしまった。
「ちょ、ちょっと!」と慌てて俺は着いて行った。
俺が追い付くと鈴乃は「まだ、同好会だけど、学校にはわたしが申請したわ」と、歩きながら説明した。
鈴乃さん行動が早い! と感心していると、鈴乃は、急に立ち止まった。そして教室を指差す「さあ、着いたわ!ここが、部室!」と言った。
そこは、3階の一番奥の一際狭い教室だった。
教室の鍵を開け、扉に手を掛けた鈴乃は「言っておくけど、2人きりだからって、私に変な気を起こすのはやめてね!」とじろっと俺を睨んだ。
「先生に、この教室を部室として使用する許可も取ったんだから」と言いながら鈴乃は、教室の扉を開けた。
確かに鈴乃は、美少女であり、その、体形も素晴らしい。でも、そんな不埒なことばかり考えていないよ!と俺の心の声が叫んでいたが、そう言われると、変に意識して視線を外し、赤くなってしまった。
しかし「異世界探検部」なんてへんてこな部活動に同好会とはいえ、よくもまあ許可が下りたもんだと、考えながら鈴乃に続いて教室に入った。
教室は、机と椅子が無造作に並べられて、春の西日に染まり静まりかえっていた。
鈴乃が窓を開けると、運動部の掛け声や吹奏楽部の楽器の音色が、春の匂いと共に部室にふわっと流れ込んできた。
コホンと、鈴乃は咳払いをし、「いい円正寺君。ここが異世界探検部の拠点よ」と言った。「わたしが、部長。円正寺君は副部長ね!」鈴乃が俺を指差した。
う~んいつのまにか、決められてしまったのかと思いつつ、どう反応したらよいか戸惑っていると、鈴乃は「あ、そうそう、わたしの指輪をよく見せていなかったわね」というと、おもむろに、鞄から指輪を取り出しこちらに見せると「あなたの指輪も見せてくれない?」と右手を出した。
「じゃあ、ちょっと待って」と言うと俺はゴソゴソと鞄の中から指輪を取り出した。
鈴乃に渡された指輪は金色だったが、中の宝石は赤く、そして指輪に描かれた模様が俺のものとは違っていた。
「ふーん。円正寺君の指輪は青いのね、模様を私のものとは違うわ。でも、ミーと言う黒猫から指輪をもらったという共通点を考えてみると、他にも指輪をもらった人物がいてもおかしくないわね」と鈴乃は片方の目を閉じ、俺の指輪を上に掲げぐるぐるとひっくり返す様に見つめた。
俺は「そうだね、他にいてもおかしくない」と指輪をお互い返しながら相槌を打つと、鈴乃は、「じゃあこれから、探しに行きましょう!」と徐に指輪を床に投げつけた。
「えっ!?」と思った瞬間俺たちは、まばゆい赤い光に包まれると、もうひとつの世界に立っていた。
指輪の使い方だが、どうやら指輪の近くにいる者、若しくは指輪を持っている者は、一緒にテレポーテーションができるらしい。