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りんけーじ79 朝のお風呂だよっ♪

りんけーじ79 朝のお風呂だよっ♪


「ほーっ、相変わらずいい体してるわねーっ」浴場から鈴乃の声がした。

「あんた、やっぱり、女の子でいる方がいいわよ、可愛いし、スタイル抜群だもん」

「な、なんで、元男の康太にわれが負けるのじゃ」凜が騒いでいる。

「ますたー、大丈夫ですよー、ますたーには、ますたーの魅力が有りますから」えるの凜を慰める声がする。

「円正寺先輩!どうしたら、そんなに胸がおっきくなるんですか?」あかねの声がする。

「わ、わたしが、円正寺さんのお背中をお流ししますね」ヴァールが耳元で囁く。

「あのー、鈴乃さん、何も見えないんですが?」タオルで硬く目隠しをされた俺は、ヴァールに手を引かれ、真っ暗闇の浴場をとぼとぼと幼児の様に歩き、ようやく洗い場のイスと思われる場所にストンと腰かけたところだった。

「当り前じゃない、今女子と言えど、元男でありかつ、またいつ男に戻るとも知れない輩のあんたに、私たち女子の全身を曝け出す訳ないでしょ!」鈴乃の冷淡な声が浴場に響いた。

みんなと一緒に入浴すると言うことで淡い期待を描いてしまったが、やはりこう言う事だったか。当然といえば当然である。

「さあさあ、変な事ばかり考えてないで、体洗ったら普通のお風呂に入るわよ」鈴乃は俺の手を取ると泡の付いたスポンジをポンと置いた。

 俺は言われるがまま、スポンジで自分の体をキュキュッと洗った。

「朝のお風呂っていいですよねー」あかねは、わしゃわしゃと髪の毛を洗っている様だ。

「目が覚めるのう」凜がジャーっと、体をお湯で流しながら言った。

カコーンと、桶の音が響き、さあっと木々の間を通り過ぎるそよ風の音がした。

「はーっ、朝の空が清々しいわねー」ちゃぷんと鈴乃が湯船に浸かる音がする。

な、なんか目で見えない分、妄想がどんどん膨らんでしまう…

「円正寺さん、大丈夫ですか!?どこか具合が悪いんですか?」息遣いの荒くなった俺の頭の後ろから、ヴァールの声がした。

「い、いや、大丈夫」俺は、冷静を装いヴァールに返事した。

「それじゃ、お背中流しますね」ヴァールが続けた。

俺は赤くなって黙って頷いた。

―――と、背中に柔らかいスポンジの感触がした。

女子に体を洗われている心地よい感触で首筋にさわさわと鳥肌が立った。

シュッシュッと、スポンジが背中で軽く動いていている感触の気持ちよさのあまり思わず昇天しそうになった。

「はい、終わりましたよ」ヴァールの声と共に意識が俗世に戻ってきた。

俗世と言ってもここは異世界だなと思うと、妙な感覚である。

「あ、ありがと、ヴァール」俺の声はやっぱり、女子の声だった。

目隠しをしているせいで、余計に自分で発している声が自分の声ではない様に気がした。

「..せやさかい、わらわがえる親分の背中を洗う言うとります」

「いいや、ますたーであるわれが洗うのじゃ!」

何だか、マリスと凜の声がする。

「いくら、大親分の凜様の言う事やって、える様の事は譲れへんで!」

「いいや、えるはわれの眷族じゃ!眷族の面倒を見るのはますたーとして当然の事じゃ!」

―――どうやら、えるの背中をどちらが洗うかでマリスと凜が言い争っている様だった。

「それじゃ、お湯で体を流しますね」ヴァールの声と共にサラサラとお湯が体を伝った。

「いや、わらわが」

「いや、われじゃ!マリス!スポンジを放さんか」

「いいえ、放しません」

「ぐぬぬぬ..」

マリスと凜はお互い譲らない様子だった。

そのうち「あっ!」とマリスと凜の声がした。

「!?」何か軽い物が頭の上にポンっと乗っかった感触がした。

「われの物じゃ」

「いいや、わらわのです」

凜とヴァールの声が響いた瞬間、たったったったっと、2人の走る足音が近付いてきた。

「あっ、危ない」ヴァールが俺にしがみ付く感触がした。

「うわぁ」次の瞬間俺は、何か柔らかい2つの塊が体にぶつかるのを感じた瞬間、俺はヴァールと一緒に反対方向に弾き飛ばされた。

暗闇の中何が何だかわからず、うつ伏せに倒れた。

「いててて..」俺は起き上がって、状況を確認した。

目を開くと、そこには一つのスポンジを奪い合う凜とマリスがいた。

えるは、2人の間に立って「ますたーとマリスの代わりばんこに洗ったらどうですか!?」

と仲裁した。

横にはヴァールがしがみ着いていた。

奥の洗い場ではあかねが体を洗っていた。

湯船の方を見ると鈴乃が太腿までお湯に浸かった状態で立っていた。

「しょうがないなー、凜もマリスもいい加減にしろよ」俺は凜とマリスに言った。

「なあ、鈴乃」俺は鈴乃の方を見た。

鈴乃は何故か固まっていた。

「い」鈴乃は言いかけた。

「え?」俺は鈴乃に聞き直した。

「い」鈴乃はわなわなと震えていた。

「い?」俺はオウム返しに答えた。

「いやああああ!」鈴乃の絹を裂くような悲鳴が浴場に響き渡った。


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