りんけーじ71 ゲルトルフード草
りんけーじ71 ゲルトルフード草
凜は、えるにポテスト・ポリパスとテラ・ゴストムを切り身にしてもらっていた。
「これでいいですか?」えるは凜に尋ねた。
「うむ。これを人数分作るのじゃ」凜がえるに答えた。
「はいっ♡ますたー」えるは、材料を切り分けた。
凜は切り身に塩を振りコンロに並べた。暫くすると、ジュワーっと火に油が滴り落ち香ばしい匂いが広がった。
「おやぶん…」 マリスは、凜とえるが仲睦じく調理しているのを恨めしそうに、見ながら、えるから俺と料理を作る様に言われたため、調理に取り掛かっていた。
「しゃーない、ええっとあんたはんは?」マリスは興味なさそうに俺に一瞥した。
「俺は、円正寺康太だけど、今は故合って、円正寺紗那って言います」俺はマリスに自己紹介した。
「ふうーん」マリスは腕組みをすると、しげしげと俺を見た。
「最初の名前は男名やな…でも、今はどう見ても少女や…あんたはんも器用やな」マリスは俺の胸を見た。
「こ、これは、俺は本来は男だ」俺は腕組みして顔を赤らめた。
「ほーっ、でも今は少女やな」マリスは俺の体全体を見た。
「変な植物にやられて、女になったんだっ!」俺は涙目になりながら必死に言った。
「へーっ、変な植物…」マリスは口に手を当てた。
「男を女に変える植物やね」マリスの口振りは心当たりがある様だった。
「マリス!..さんっ、その植物の事知っているのかっ」俺はマリスに尋ねてみた。
「心当たりが、無い訳ではないんやけど…わらわが知っているのは大きな花で、大きな葉には♂と♀の模様がある草で…」マリスは花の大きさを手で輪を作りながら説明した。
「そうその草だ!何か知っているのか?」俺はマリスの青い瞳を見つめた。
「せやな、それゲルトルフード草やろな…」マリスは涼しい顔をして言った。
「元に戻る方法はあるのか?あるんなら教えてくれないか!」俺はマリスに詰め寄った。
マリスは眼を閉じ暫く時間を置いた後口を開いた「まあ、知らんと言えば、知らんし、知っとると言えば、知っとるんやろな…」
ここまで言いかけてマリスは話すのをやめた。
「どうすれば…」俺はマリスを更に問い質した。
「うーん…」マリスは人差し指を頬に当てて考えていた。
「・・・」俺は、マリスの答えを待った。
「話たら、長くなるしなぁ~、そんなに焦ってできることでもないしなぁ~、どうないしよ…まあ、取り敢えず料理を作ってからにしよか、それに少女のあんたはん、結構可愛いからそれでもええんちゃう?」マリスは俺に微笑みかけた。
「わかった..」俺は、マリスと料理を作ることにした。
今、元に戻る方法を知っているのはマリスだけである。
「ほしたら、マリス様直伝ののナメロを作るで!」マリスは得意げにウィンクして見せた。
俺は頷いた。
「じゃあ、先ずテラ・ゴストムの切り身を取って..」と、言うとマリスはドラゴンの爪でスパッと巨大な魚を切り裂くと、 あっという間に切り身が取れた。
「次にこれをみじん切りにしてやな…」マリスはタタタタと、眼にも止まらぬ速さで、爪を動かした。
「これに、ヤポニカポルムと、アリューム、ジンジベル、ゾーイ豆の発酵ペーストと、塩漬けゾーイ豆の発酵液を入れてこれをナイフで叩いて混ぜるんや!あんたはんも手伝うてくれへん?」とマリスは俺にナイフを渡した。
俺は言われた通り、ナイフで材料が良く混ざる様に叩いた。
程よく混じったところでマリスが、「まあ、そんなもんやろ、ちょっと味見してみるわ」と言ってスプーンですくって、試食した。
スプーンを口に含んだ瞬間、マリスは小さく震えた様に見えた。
そして「うま~ぁい!!」と言って、俺にも一口取って味見する様にスプーンを口に近づけた。
俺は、恐る恐る口にくわえた。
その瞬間、魚の甘味と、野菜と調味料たちとの絶妙なバランスが口の中に広がった。
「テラ・ゴストムって、こんなに美味しいんだ!」俺は、口に含んだナメロを味わった。
「どや?うまいやろ!」マリスが親指を立ててウィンクした。
「本当に美味いな」俺は、マリスに返した。
「ふ、ふーん!これが、マリス様直伝のテラ・ゴストムのナメロや!」
「ふーっ、揚げ物は暑いわね」と言いながら鈴乃は、あかね、ヴァールと、ポテスト・ポリパスとテラ・ゴストムのフライを作っていた。
真夏の遅い太陽が少し傾きかけた頃「大体今日の料理は完成したわね!」と鈴乃が料理をテーブルに盛り付けながら言った。
出来上がった料理はポテスト・ポリパスの丸々焼き、塩焼き、フライ、テラ・ゴストムのナメロが皿に並んだ。
「いっただっきまーす!」皆がテーブルに着いた。
「かんぱーい」皆汗を掻いたので、水分と塩分補給のため、この地で良く飲まれている、
ドラゴン・チーライの塩ジュースで乾杯した。
「このジュース、フルーツの甘味と、塩味が絶妙ね!汗で失った塩分補給もできるし、氷で体が冷やされるわ!」鈴乃が言ったとおり、みんなゴクゴクと飲み干し、お代わりした。
氷は鈴乃が魔法でこっそり作っていた。この炎天下には有難い。
最初にポテスト・ポリパスの丸々焼きを、食べてみた。
「めっちゃ、美味い!」外がカリカリで中がクリーミー、ソースとの相性も抜群だった。
中に入っているポテスト・ポリパスも噛み応えがあるが硬すぎず、噛めば噛むほど味わいが広がり美味しかった




