りんけーじ67 地竜VS海竜
りんけーじ67 地竜VS海竜
天候が増々悪化していく中、えるとマリスはガシッと組み合った。
尻尾が生え、足の爪も鋭く尖っていた。
組み合った両手からは電流の様なものがほとばしった。
一触即発の状態とは正にこの様なものだろう。
「ちょつと、待て!」その時荒ぶる2頭?の間に割って入る勇気の者がいた。
「誰や!」マリスが叫んだ。
それは凜だった!
凜は気丈にもボクシングのレフェリーの様に2人を分けた「お主たちに、ここで暴れられては、周りにいる者に被害が及ぶじゃろう」
えるは頷いた。
「最悪、怪我では済まぬかも知れぬ」
「そこでじゃ!ここに釣り竿がある」
「知っての通り常人では、持ち上げるのも困難な代物じゃ」
「じゃが、お主らドラゴン族にとってこの様なものを扱うことは他愛のない事じゃろう」
「まあ、そうやろうね、なあカルブンクルス...いや今は、えるはんやったな」マリスはじろりと蛇の様な瞳でえるの方を見た。
凜は尚も続ける「では、2人で釣り対決をするのはどうじゃ」
「この釣りで釣れるその何とか言う魚を釣った方が勝ち、と言うルールじゃ」
「いいでしょう!」えるはマリスを睨んだ。
「ほお、この海竜いや海の女神である、わらわに海釣りで勝負を挑みますん?」マリスは涼しい顔をした。
「後で後悔しても知りまへんで」マリスは不敵な笑みを浮かべた。
「ほしたら、条件があります」マリスは鋭い爪が生えた腕を組んだ
「この勝負で負けた者は、勝った者の子分になると言うのはどうやろ?」マリスの瞳が細くなった。
「ふふふっ、前からえるはんのこと、顎でつこうてみたかったんや!」マリスが意地悪そうに言う。
暫し間をおいてえるが口を開いた「でも、あなたが負ければ逆になりますよ」
「あははは、海の釣りでわらわに勝つつもりなんか?ちょー笑えるんやけどw」マリスは
牙を見せて、泣きながら笑い転げた。
「や、やってみなければ、わかりません」憮然とえるは答えた。
マリスは「よし、えるはんがそう言うならええやろ!先にテラ・ゴストムを釣り上げた方が勝ちや!」と言うと早速竿を握りしめた。
「では、釣りの準備にかかれ!」凜が仕切った。
える、マリス共完了したところで、凜が叫んだ「それでは、はじめっ!」
「ほな、行きまっせ」マリスは海に向けて竿を振った。
ビュンと、音がして仕掛けがものすごい勢いで海に跳んで行った。
「えいっ!」地竜一族の誇りとして海竜のマリスには負けられない…えるは心で呟いて、竿を振った。
える…頑張るのじゃ。凜は願った。
仕掛けを投入してから最初の1時間ほどは両者とも変化が無かった。
しかし、最初にアタリがあったのは、やはりマリスだった。
「おおっ!きたで!!」と言う叫び声と共に、マリスの竿はギュンとしなった。
「うひょー!これは、大物やな」マリスは魚の強烈な引きに堪える。
「糸を切られんように、魚を弱らせてから取り込まんと」尚もギュンギュンしなる竿をいなしつつ、マリスは得意げに舌で唇をペロリと舐めた。
暫く、魚とのやりとりをしていたマリスだったが、ようやく魚が弱ってきたようで強烈
に引かなくなってきた。
「これで、いただきやね!これであんさんは、わらはの子分や!ああ、千年前の恨みがはらせるで!」マリスは弱ってきた魚を寄せてきた。
「えるはんがわらわの子分になったら、最初に肩でも揉んでもらうか」マリスはえるの方を見てウィンクした。
狙っていた魚のテラ・ゴストムの巨大な影が、ゆら~っと水面に見えた。
その影はまるでクジラの様に巨大だ。
くくっ!やはり地竜では勝てぬのか…えるは悔し涙を瞳に湛えて敗北感に打ちひしがれてうつむいた。
「さあ、これでいただきやな!」マリスは魚を釣りあげた。
「ああっ!」誰もがえるの敗北を確信した。
―――と、次の瞬間マリスの竿が再びしなった。
と、同時にテラ・ゴストムの巨大な影が、水面で暴れだしたかと思うと、その下からさらに巨大な影がヌゥーっと現れた。
その影は、暴れるテラ・ゴストムの影を包みこんでしまった。
「なんやねん!?」マリスは慌てて竿を持ち上げた。
すると、その巨大な影はザッパーっと言う音と共に、陸に引き上げられた。
その黒い影の正体は…
何と、俺を襲ったタコの化け物だった!
「なにさらしてけつかんねん!何で、オノレが釣れるんや!」マリスもタコの様に真っ赤になって怒った。
「えっ?」一連の出来事に一同があっけにとられていた。
―――と、その時、クンっと、えるの竿に強い引きがあった
「!?」えるは竿を握る手に力を込めた。
足を踏ん張り強い引きに耐える。
なおも竿はギリギリと曲がった。
次の瞬間何かが海面を跳ねた。
「テラ・ゴストム!」えるはキラキラと光る巨大なその姿を確信した。




