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りんけーじ66 光の美女

りんけーじ66 光の美女


俺はタコの化け物に足を掴まれたまま、海底に引きずり込まれた。

水着を脱がそうとする触手に、脱がされまいと、必死に両手で水着を掴んで抵抗した。

段々と意識が朦朧としていく。

このまま、ここで一生を終わるのか…..

短い生涯だった….

水面から光が差し込んでいる。

海面がキラキラと輝いているキラキラとピカピカと

―――と、突然俺は眩い光に包みこまれた。

「!?」

不思議な事に光の中では、息ができた。

俺はゲホゲホと水を吐き出し思い切り空気を吸い込んだ。

次の瞬間足に絡みついた触手が離れ俺は浮上していった。

光からは、まるで誰かに抱擁されている様な柔らかな温もりも感じられた。

水中で冷たくなった俺は、徐々に生気を取り戻して行った。

やがて、水面に顔を出すことができた。

「円正寺君!大丈夫なの?今、助けに行こうとしていたのよ!」浮かび上がってきた俺を見て、鈴乃たちは涙を目に浮かべ、あっけにとられていた。

俺は、何とか手を振って答えた。

無事を確認した鈴乃は俺を再度見て言った「円正寺…くん、何かあなた光輝いているわね」

俺も徐々に意識がはっきりとしてきたので、全身を包んでいる光をしっかりと見た。

何とそれは美しい女性であった!

そして俺が感じた柔らかな温もりの正体は、その美女の豊満な胸に顔を埋めていたからだった。

俺を抱きかかえた美女は目が合うと、語りかけてきた「かまへんか?大変申し訳ございまへん」。

「へっ?」俺は面食らった。

光の美女はすまなそうな顔をして続ける「うちのたこ坊主がご迷惑をおかけしてもて…危うく、あんさんが命落としてしまうところやった」

光の美女は俺の頬を右手で撫でた「せやけど、わらわがいれば、そないなことはさせまへんから、堪忍したってや」

その美女は自分の胸に手を当てた「ああ、申し遅れよってんけど、わらわは、マリスと言います。こう見えても、海の女神やねん」

「あんたたちが、供え物をくれたんやろ、わらわは、あのカエルの干物が大好物なんやで。そないな信心深い方たちに変な事はせえしまへん」

海の神様は本当にいたんだ!ヴァールがお供え物をしてくれたおかげで、助かったと、俺は感謝した。

マリスは、鈴乃たちの方を見た「あんた方、釣りをしとるんやろ?」

鈴乃は頷いた。

「せやったら、わらわが、豊漁を約束してあげます」マリスは微笑んで瞳を閉じた。

「せやけど、取る量は自分たちが必要な分だけやで」マリスはウィンクした。

俺を抱きかかえたまま浮かんでいたマリスは、全身を水上に現すと、すっくと水面に立ち上がった。

その姿は、白い布で全身を覆った正に女神だった。

そして、鈴乃達の方へ向けてまるで草原の様に、海の上を静々と歩いてきた。

や、やっぱり女神なんですね…その様子を見つめていたあかねは、心の中で呟いた。

マリスは岸までたどり着くと俺の顔色を見ながら言った「もう、かめへんね?」

「うん」と俺は答えると、マリスから地上に下ろされた。

「円正寺さんっ、大丈夫ですかっ?」ヴァールが駆け寄ってきた。

「うん、とりまダイジョブ」俺は答えた。

マリスは他のメンバーも見渡した「若い女の子ばっかりやね」

マリスはふと、えるに目を止めた「おや、あんたさんは…」

えるは、にこりと笑った。

「エルゴンドラ・ドラゴンのカルブンクルスはんやないか?」マリスはえるに言った。

「いえ、えるです」えるは答えた。

そう言われたマリスはえるをまじまじと見た「いいや、あんたさんはカルブンクルスはんや!わらわが、見間違えるわけがあれへん!」

「いいえ、えるです!」えるは、なおも繰り返した。

マリスはプイっと頬を膨らませた「わらわは、海の女神やけど、本性は海の竜や!地と海の違いはあるけど、同じ竜族ましてやあんたのこと、間違うはずあれへんやんけ!」

ここで、凜が割って入った「この者は確かに竜族の血を受け継がれし者じゃが、われの眷族のえると申す。のう、える」

えるは、まずいことになってきたと思いつつ頷いた。

「ほお、あんた今はえると言うんやな。せやけど、あんたはカルブンクルスや!」マリスの瞳が青白く燃えた。

「あんたとは、千年前の禍根があるんや!よもや、忘れたとは言わせへんで!」

「さ、さあ何のことやら」えるはしらばっくれた。

「ほなら、あんたがしらばっくれるなら、千年前の続きを今ここでやってもええんやで!」マリスの瞳は猫の様に細長くなり、口は耳まで裂け、指の爪が鋭く尖った。

すると、今まで晴れていた空に急に黒雲沸いたかと思うと、ゴロゴロと雷鳴がとどろき、突風が吹き始めた。

それまで穏やかにエメラルドグリーンをしていた海面は、鉛色になり荒波が立ち始め堤防にもドンっと打ち付け始め、その度に波しぶきが上がった。

「さあ、どないするんや!」マリスは鋭い眼光をえるに投げかけた。

それまで微笑んでいた、えるは「はぁ」と小さいため息を付くと「無用な争い事は、避けたかったのですが、あなたがそう言うのでは仕方ありませんね」と言うと、マリスと同じ様に顔付きが変わった。すると、地面が揺れゴゴゴゴと地鳴りが響いた。

まるで天変地異だ!

「きゃあ」とあかねが、叫んだ!


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