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りんけーじ65 海にぼちゃん!

りんけーじ65 海にぼちゃん!


「この釣りはアトゥラーントと言う釣り方だそうで、初心者にもオススメな釣り方らしいですよ」ヴァールは手に持った竿を眺めた。

「そして、竿を後ろに振って、えいっと前に向かって振ります」そう言うと、ヴァールは青空に竿を振り上げ、前に振ると仕掛けはヒュンと海に向かって跳んで行った。そして、ぼちゃんと海面に仕掛けが入った。

「そうしたら、竿を振ってカゴから餌が海中に広がる様にして、魚が掛かるのを待ちます」ヴァールは竿を上下に振って、その後糸をぴんと張ると後は海鳴りだけが、響いた。

みんなヴァールに倣って竿を持ち上げた。

しかし、重い。

鈴乃は、内股になった足を、プルプルと震わせながら、竿を持ち上げたが、「これは少し無理そうね…そうだ!反重力魔法があったわね」と心の中で呟くと呪文を詠唱した。

すると、鈴乃の腕から竿がほのかに輝き、ふわっと、軽くなった。

鈴乃は「とりゃー!」と竿を振った。

「さすが、鈴乃さん!」とあかねは感心していた。

「ま、まあね」鈴乃は、あかねに曖昧な笑みを浮かべて答えつつ、実は少し魔法を使ったことは黙っていようと心に決めたのだった。

凜は、鈴乃の様子を見ていたが「フフフ、われにとってこの様なものは朝飯まえじゃ!」と言うと地面に置いてある竿に手を掛けたが「うぬぬ…」と言うと、竿はそれ以上ピクリともしない。

更に、顔を真っ赤にして「おのれ…」と言って何とか竿を持ち上げたが、よろよろと足元がおぼつかない様子だった。

「なんのこれしき…」と竿を振り上げると、「うわぁ~」と叫びながら勢い余って後ろにひっくり返ってしまった。

「あいたた…」と言いながら凜は立ち上がると「本来、われにとってこの様なものは容易いのじゃが、えるもやってみたいじゃろう」とえるの方を振り向いた。

えるは凜の様子をみていたがニコリとほほ笑みながら頷いた。

「し、仕方ないのう、えるがやりたそうじゃから、えるに譲るとしよう。のう、える」と言うと、凜はえるに竿を引き継ぐとほっと溜息をついた。

えるは竿をむんずとつかみ「はい、お任せくださいマスター!じゃあ、やっちゃいますよ!」と言うとえるは軽々と竿を振り上げた。そして、ヒュオッと、勢いよく仕掛けを海に投げ入れていた。

さすがドラゴン!

「マスター、これで、いいですか?」とえるは、凜の方に振り向いた。

凜は「うむ、われがやれば、もう少し上手くできたと思うが、まあ、えるがやったと思えば、いいじゃろう」と腕を組んだ。

あかねも竿と格闘していたが、「あちゃー、これじゃ重すぎだよ」と困惑しているのを、鈴乃は横目で見ていたが、あかねの竿にもこそっと反重力魔法を施した。

するとそれまで苦戦していたあかねは、「あれ?何だか急に軽くなった気がする」

と、言うと竿を軽々と振り上げ一気に仕掛けを海に振り込んだ。

「!?」あかねは狐につままれた様な顔をして「何か上手くいった…」と呟いた。

みんなそれぞれ何とかやっている様であったが、俺はと言うと、持ち上げられない竿と苦闘していた。

女性の体になってから、やはり、男性型の体より筋力が低下している様だ。

「あらぁ~、円正寺君も大変そうね、手伝う?」鈴乃が涼しい顔をして言った。

何か悔しかったので、「いや、大丈夫だ」と重たい竿を何とか地面から引きはがしながら、俺は答えた。

後は竿を振りかぶって、俺はよろよろしながら、構えた。

「よしっ!あとは前に振り下ろす」反動を利用し、何とか竿を振り抜いた。

「ビュン!」竿は物凄い勢いでしなった。

「!?」その瞬間何故か俺は宙に浮いていた。

景色がスローモーションで流れていく。

「あ~っ!」と、叫ぶみんなを見下ろしながら、竿と共におれの体はふわっと飛んでいく。

次に見えたのはキラキラ光る海だった。

ふと、気持ちいいな~、海がきれいだな~と思った瞬間、水面が迫ってきた。

ドッポーン!

俺は、海中にいた。

実際のところ数秒だったが、妙に長く感じた。

俺は泡に包まれながら海中に潜っていく、

海の中ってきれいだな~光が差し込み、どこまでも続くユラユラ揺れる水中を眺めていた。

風景に見とれていると…だんだん、息苦しくなってきた。

これは水面に顔を出さねば、と思い腕を上に伸ばし水を掻き上げた。

ところが、体は尚も水底に向かって沈んで行く。

何か右足に重さを感じたため見ると、吸盤が付いている無数の触手が足に絡まり付いて下へと引っ張っているのが見えた。

触手の奥にギラギラ光る眼が二つ輝いている、まるでタコの化け物だ!

触手がジワジワと足の付け根の方まで迫ってきた。

何とかこの状況を打開しなくては。

「このっ!エロダコめっ!俺は今は女だが、男だぞ!放せっ!コノヤロー!」俺は必死に、左足で蹴って右足から外そうとしたが、それはヌメヌメしていて上手く外せない。

「ゴボゴボ…」俺は声にならない声を上げて、手を頭上に向けて水を掻いた。

息が苦しい!

息が続かなくなり「がはっ」と俺は、肺の中の空気を吐き出した。

―――徐々に意識が遠のいていく―――


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