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りんけーじ63 異世界の海

りんけーじ63 異世界の海


なかなか元の体に戻れず、女子としての生活に慣れてしまっている今日この頃だった。 そんなある日、部室に行くと鈴乃が座っていた。

俺が入ってきたのも気づかず、鈴乃は熱心に机の上の何かにじっと見入っている。

「やあ!」俺が声を掛けると鈴乃はこちらに顔を向けた「ああ、円正寺君」

―――鈴乃は俺が女性化した後も、ほかに人がいない時はそう呼ぶ。

「ねえ、円正寺君、あっちの世界の海にいってみない?」鈴乃は机の上の物をこちらに広げて見せた。

それは羊皮紙に記された地図の様だった。

「これ、あっちの世界の地図よ」鈴乃は丸まろうとする地図の上下に重しを置いた。

「へぇーっ、いつの間に入手したんだ?」俺は地図を覗き込んだ。

「のみのおじいさんから買ったのよ。ここが、いつも私たちの入り口となる街ね」鈴乃がスッと人差し指で示す。

その指を上に動かし、「北の方角には湖を取り囲む様に暗い森が広がっていて、その先には山脈があって、更にそこを越えると別の国になっているようね」

「ああ、見覚えがある」俺はドラゴンが飛んでいた山を思い出した。

「のみのおじいさんに聞いたところによると、暗い森から山脈にかけては魔界になっていて、魔物が沢山生息していると言う話だわ」鈴乃は顎に手を当てた。

次に鈴乃は指を下に移動させた「南に行くと海が広がっているみたいね」

地図を見ると海には得体のしれない生物の絵が描かれていた。

「のみのおじいさんの話によると、海には、とても美味しい魚がいて、釣りができるそうなの。釣った魚は海辺の街の店で料理してくれるらしいの。行ってみない?」鈴乃はじゅるりと手でこぼれ落ちそうになったヨダレを拭った。

「海か、釣りをしてみるのも面白いかもな」俺は行く事に同意した。

ヴァールやあかね、凜とえるにも声を掛けると行ってみたいと言うことになった。

「それじゃあ、これから円正寺くんの水着を買いに行きましょう」鈴乃が音頭を取った。

「えっ、べつにいいよ」俺は断った。

「海に行くんだから、水着は必要でしょ、さあ、行きましょう」

「ちょ、ちょっとぉ」俺は、鈴乃に半ば強引に腕を取られ部室を後にした。




次の日、俺たちはもう一つの世界の街に着くと、早速えるは人型から見上げる大きさのドラゴンにメタモルフォーゼした。

「それじゃ、えるよろしく頼むぞ!」凜はえるに声を掛け、凜に続いて俺と、ヴァール、あかねは、尻尾からえるに登って行った。

鈴乃は箒に腰かけた。

みんなが搭乗したのを振り返ってえるは確認すると「それじゃあ、舞い上がりますよ!」とえるは、テレパシーで声を掛けた。

えるは、ばさっと翼を広げた、そして羽ばたくとゆっくりと浮かび上がった。

鈴乃も続いた。

やがて、雲を突き抜け、羽根を羽ばたかせて飛ぶ、えるの背中から眼下には小さくなった街と城が見えた。遠くには薄暗い魔物が棲むと言う森とそれに囲まれた湖、雪を頂いた山脈。

街はやがて穀倉地帯となり、それを過ぎると荒野が広がった。

えるの背中に乗せてもらって空を飛ぶのは気持ちいい!

鈴乃も空を飛ぶのも慣れたのか、えるの周りを旋回して、楽しそうだった。

暫く飛び続けると、「あっ、見えてきましたよ!」とえるが、みんなの頭に直接語りかけてきた。

目を凝らして地平線を見ると、キラキラと輝いているのが見えた。

「おぉ!海じゃな!」凜がツインテールを風に靡かせ、おでこに手で庇を作った目を細めた。

海に近づくと、海辺の街が見えてきた。するとぶわっと、塩と魚の混じった様な潮風の匂いがした!

えるは波打ち際の適当な砂浜を見つけるとゆっくりと降下していき、砂浜にいた人々が驚く様を尻目に、その巨体を見事にふわりと舞い降りさせた。

鈴乃も後に続き、すとんと着地した。

みんなを下ろすとえるは人間モードになった。

ヴァールは早速周囲の女子に話しかけ、この辺りの情報を収集していた。

俺はそんなヴァールの様子を見ながら、高校生になってから随分変わったものだと、しみじみと感慨に耽っていた。

ふと、隣を見ると鈴乃も、お婆ちゃんが孫を見る様な目つきでヴァールを眺めていた。

ヴァールは、一通り聞き終わると俺たちの方にやってきた「この先のバザールに釣り具を貸してくれるお店があり、そこで着替えもできる様です、さあ、行きましょー!」

みんなでヴァールの後に着いて行った。

ヤシの様な樹が植えられていて、白い壁の建物と相まって街並みがオシャレな感じだ。

やがて、バザールに入ると何件か貸釣具屋兼海の家の様な店店が現れた。

その中の1件をヴァールは見定め「ああ、ここだ、ここだ」と近づいた。

「みなさん、ここがさっき聞いたオススメのお店ですよ」ヴァールは店内に入っていった。

「こんにちはー」ヴァールが声を掛けると店の奥から店員が出てきた。

店員はアリクイの様な口をした大きな黒い目をした亜人だった。

ヴァールが話しかけると店員は、うれしそうに受け答えしていた。

「ここで、大丈夫みたいです」店員と話していたヴァールが振り返った。

「まず、ここで水着に着替えて、釣り道具を借りて、釣りは下の岸壁でできるそうです」

ヴァールは俺たちに説明した。

「はーい」一同いい子で返事した。

「更衣室は店の奥にあるそうですから、そっちに行きましょう」ヴァールが促がした。

ヴァールに続いてみんなで店内にはいいて行った。

店員が案内してくれた。

店内は食堂も兼ねている様で、こちらの世界の人間の女の子のほかに、亜人のけも耳に尻尾の娘、エルフの娘、角が生えて、牙のある娘などがいた。

みんなカワイイが、ビキニの様な水着で、そんな娘たちがキャピキャピと、こちらの世界のガールズトークを繰り広げている中を通っていくのは、今は同性と言えど、何とも目の遣り場に困って赤くなって下を向いてしまった。

そんなわけで、前を歩く鈴乃の足下を視線で追いかけて歩いた

「さあ、更衣室に着きましたよ」ヴァールの声がした。

「あ、あの、俺も着替えなきゃダメ?」俺はみんなに確認した。

みんなはにこっと頷いた。


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