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りんけーじ62 体育の授業

りんけーじ62 体育の授業


俺は目隠しをしたが、手の隙間からチラッと室内の空間が見えてしまった。

わっ!女子更衣室の中だ!と、思ったのも束の間「ちょっと、待ったぁ~!」と言う声と共に、女子更衣室からはじき出された。

「!?」俺は目を回して廊下に尻もちを着いた。

ようやく視線が定まると、更衣室の前に両手を思いっきり伸ばしたヴァールがいた。

「大丈夫ですかー?」と言うと、ヴァールは俺と腕をがっしりと組み、全速力で駆け出した。

俺は、ふわっと浮かび、人形の様になすがままだった。

ようやく廊下の角を曲がったところで、俺は着地した。

「ふ~っ、危なかった~」ヴァールは額を腕で拭った。

「ありがとう」俺は、安堵すると共に、ほんのちょっと、残念な気持ちを抱えながらヴァールに感謝した。

「紗那さんっ!いくら今は、女の子だと言っても、心は男子なんですからね!」ヴァールは右手の人差し指を左右に振りながら俺をたしなめた「それに、いつ、男子に戻るかわかりませんからねっ!」

きっと、中にいる女子から袋叩きだ、無事には出られまい。

万一女子更衣室の中で男に戻った時のことを考えると、恐ろしくなり震えた。

「あれ?円正寺さんどうしたの」内谷 花音と辻 綾花が、探しに来た。

「ああ、円正寺さんは忘れ物があって、取りに行くので、先に着替えていて」ヴァールは花音たちに説明した。

「ふーん、じゃあ先に行ってるからね」花音たちは更衣室に向かった。

「じゃあ、話した手順通り、わたしが先に更衣室で着替えますから、女子が誰もいなくなったら声を掛けます、そしたら、入ってください」花音たちがいなくなったのを確認してヴァールは言った。




俺は、更衣室の外で待ち、ヴァールから合図があったので、中に入った。

スカートとシャツを脱いだところでふと、鏡に写った自分を見た。

そこには、下着姿の美少女が佇んでいる。これがほんとに自分なのか?

くるりと回ってみたが、めっちゃかわいいし、こんなコがカノジョだったら、さぞかし自慢ができるだろうと、思ってしまった。

胸に付けたブラジャーに違和感を感じる。こんなもの、今まで装着したことないが、かといって、付けないと胸の位置が安定しない。

また、ボクサーパンツ派である俺は、このぴっちりした女子専用の三角パンツの履き心地にも慣れなかった。

鏡に写った俺を見ながら、握った手を口に当てウフフと呟いてみた。

その時「紗那さん、着替えた!?」と、ヴァールが入ってきた。

「ちょ、ちょっと待って」俺は、あわてて、ドスンと転んでしまった。

「大丈夫?」ヴァールが駆け寄ってきた。

「あいたた」下着のまま開脚した姿を正面からヴァールに見られてた。

「ひゃあ」俺は真っ赤になり、急いで立ち上がろうとしたが、再びヴァールを巻き込んで倒れてしまった。

「ご、ごめん、ヴァール」俺は謝った。

ちょうど、ヴァールと手を絡め上にのしかかった格好になっていた。

「だ、大丈夫です」ヴァールは頬を赤らめ、俺を見つめた。

俺は、真っ赤になりながら、思わずヴァールの吸い込まれそうな青い瞳に見とれてしまった。

「何やってんのー?」内谷 花音の声がした。

俺たちは、電気が走った様にぴゅんと離れ、背中合わせになった。

「い、いや、ちょっと転んじゃって、ヴァールに助けてもらっていたんだ」俺は、立ち上がり体操着にそそくさと着替えた。

ヴァールも立ち上がった「じ、じゃあ、行きましょうか」

「!?」花音たちと俺は、運動場に向かった。

整列が終わると体育教師の白幡 弥生が来た。

タンクトップに、ハーフパンツの白幡 弥生はボーイッシュな美人だが、胸がデカい。

「よーし、全員揃ったな、準備体操始め!」

「1,2,3,4」準備運動をしていると、何か悪寒が走った。

 周りを見ると、体を動かす俺に対する男子たちの視線だった。寒気がするっ。

準備体操が終わると「今日は、バレーボールの授業だ」と、白幡 弥生が言い、チームを整列順で分けた。

俺は、ヴァールと一緒のチームになった。

ピーッと笛が鳴り相手チームからサーブが始まった。

ボンと乾いた音を立てボールがネットを越えて俺の所に飛んできた。

「はいっ」俺は声をかけレシーブした。

「おぉー」その時歓声が上がった。

どうやらレシーブした時にできる胸の谷間に男子たちが興奮している様だった。

「おめーら、気持ち悪りいんだよ!」俺は、男子たちにガンを飛ばした。

「あぁ、その強気なのが、また、たまらない」「紗那さまーっ」男子たちの興奮は収まらない。

無視して俺は試合を続けた。

同じチームの女子がレシーブしたボールが俺の所に飛んできた。

トスすると、胸の揺らめきに男子たちがまた騒ぎ出した。

「いー加減にしろ、お前ら!」俺は再び、叫んだ。

今度は、前衛となり、「はいっ!」と味方の女子が俺にトスした。

「よしっ!任せろっ!」俺は跳び上がりアタックし、着地した、一連の動きで波打つ胸に男子が興奮して叫んでいる。

「スケベ!」ヴァールが男子に睨みを効かせつつ、俺に駆け寄る「大丈夫?紗那」

「我がクラスの二大美女が手をとりあっている、なんて尊いんだ」アホな男子が叫んでいる。

その時白幡 弥生が叫んだ「おい、男子元気が有り余っているのなら、校庭走って来い」

白幡 弥生が男子たちを追い払ってくれた。

「やっぱ、俺ってカワイイんだな」と、何とも言えないやるせない感情が込み上げてきた。


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