りんけーじ58 性別の木!?
りんけーじ58 性別の木!?
ある日、いつもどおり異世界探検部のメンバーで、もう一つの世界の街はずれの森を散策していた。
森と言ってもこの一角は熱帯の木々が生い茂るジャングルの様だった。
草を剣でなぎ倒しながら進んでいくと、一か所ぽっかりと開いたスペースに見慣れない大きな植物が1本だけ生えていた。
それは、ひまわりの様な形をしていたが、大きな葉には何やら♂と♀のマークの模様が付いており、花の中央は丸で大きな唇に歯が剥き出している様だった。
「妙な植物だな?」俺はしげしげとその植物を観察した。
「初めて見る植物ね?」鈴乃はいぶかし気に答えた。
「える、お主何か知ってるか?」凜がたずねたが、えるは首を横に振った。
「ヴァールさんは何か知っていますか?」あかねは振り返った。
「初めてみます」ヴァールも知らない様だった。
――― 一体何なんだろう?不思議な植物?だ。俺は植物の周りをぐるりと歩いてみた。
すると突然花がぐるりと回転し、俺の方を見ると「ぎゃははは!」と甲高い奇声を上げた。
「!?」驚いて俺は、後ろに転倒してしまった。
植物は口をすぼめ、次の瞬間「ぺっ」と緑色のねばねばした液体を俺に向けて吐きつけた。
べしゃ! おれは、ドロドロを全身に浴びてしまった。
「うわっ!なんどこりゃ?」液体を振り払いながら、俺は言った。
「円正寺君大丈夫?」ヴァールが駆け寄った。
「ああ、体は何ともない。」体を確認したが、毒などではない様だった。
「大事を取って、今日は帰りましょう。」鈴乃が言うとみんな同意した。
一晩眠って次の日の朝、俺は自分の部屋のベットの上で、いつもの様に目覚めた。
「う~ん」何かが、顔に掛かってじゃまだったので払いのける。
「痛!」手に絡まるので引っ張ってみると、それは自分の髪の毛だった。
俺こんなに長かったかな?
起き上がってみると、服が大きく感じる。パジャマが肩からずり落ちた奥に胸に膨らみが見える?
触ってみると、しっかり胸がある「・・・・」
「な、なんだこりゃ!」思わず叫んだが、聞きなれない女性の声が聞こえた。
パンツを触ってみると下半身には、有るものがない。
「えっ!えっ!」恐る恐る鏡に近づいて、自分の映った姿を確認してみると
「え~っ!!!」そこには、かわいい美少女が佇んでいた。
「ど、どうしたの?お兄ちゃん大丈夫?」叫び声を聞いた妹の英美里がドアを開けた。
狼狽している俺の姿を上から下まで、まじまじと見た後、一瞬間が有って訊ねた。
「あのー、どちらさまでしょうか?お兄ちゃんのカノジョさんですか??」
「ち、違う、俺だよ!兄貴の康太だよ!」俺は両手を胸の前で振りながら説明した。
「また、またー。お泊りですかー?お熱いですね、って見てよかったのかなぁ?」と言って信じてもらえない。
「ほ、本当だよ!昨日までは男で朝起きたら、女になっていたんだ!」俺は必死に弁解した。
「ふーん。そうなんだ!?」英美里は半信半疑に答えた。
取り敢えず着替えようと、洋服を着てみたが、背が縮んでいるらしくみな大きい。
スウェットは何とか、袖をたくし上げ着ることができた。
「でも、結構可愛いね!」英美里は俺の顔をじっと見た。
英美里はおれの髪の毛をかき上げた「ちゃんと、お化粧してみたくなった!私の部屋に来て!」
俺は、腕を引っ張られ半ば強引に英美里の部屋に連れて行かれ、鏡台の前に座らされた。
「化粧水を塗って、美容液を付けてっと♪」英美里は喜々としている。
「なぜこうなった?元に戻る方法はないか?」俺は思考を巡らせた。
「乳液を付けて、次は日焼け止め♡」英美里はテキパキと作業をこなす。
「下地を塗って、コンシーラーを付けて、ファンデーションを馴染ませて行って、フェイスパウダーでささっと」
「あとは、アイメイクっと!眉毛のアイブロウ、睫毛をビューラーで上げて、アイシャドウを塗って、次にアイラインを引いて、マスカラを塗って完成!」
「仕上げに入るよっ!シェーディングしてハイライトを付けて、チークをのせて、最後にリップと!」
「あとは、髪の毛をセットして….」
「出来た!めっちゃ可愛じゃん!!」
「えぇっ!?」確かに鏡に映った、(俺の)美少女は我ながら可愛かったので、驚いた!
「そうだ、鈴乃達に相談してみよう」俺は我に返った。
連絡を取り、俺の家まで来てもらった。
「こんにちはー。お邪魔します」異世界探検部のメンバーが入ってきた。
「いらっしゃーい」英美里が応答した。
「円正寺君が、大変な事になっているんだって!?」鈴乃が英美里に話しかけた。
「そうなんですよー。お兄ちゃんが美少女になっちゃって、それが凄くカワイイんですよ!取り敢えず見てください」英美里は部屋に案内した。
「円正寺君、入るわよー」女子たちがぞろぞろと入ってきた。
「!?」俺の顔を見るなり、みんな固まった。
「あれ?」ヴァールは口を押えた。
「円正寺せんぱいですか?」あかねは目を丸くした。
「何と!お主か?」凜は後退った。
えるはニコニコと笑っている。
「え、円正寺君なの?」鈴乃は頬を赤らめた。
俺は無言で頷いた。
「き、」鈴乃が発した。
「き?」俺は聞き返した。
「き、」鈴乃は再度言った。
「き?」俺は再度聞き直した。
「きゃー!カワイイ!!!何それ?きゃははは」鈴乃は、涙を流しながら、笑い転げた。




