りんけーじ42 寂しがりやの幽霊
りんけーじ42 寂しがりやの幽霊
気が付くと、フードの人物が鈴乃たちに囲まれ、手で顔を覆って啜り泣いていた。
「エッ、エッ…..」
「—―—で、あなたが、ここら辺を騒がしている幽霊さんなの?」腕組みをした鈴乃が話しかけた。
フードの人物はコクリと頷いた。
「なぜ、街の人々に迷惑を掛けるのじゃ?」凜が問い質した。
「だってー」その時、フードがバサッと落ちた。
水着のビキニの様な格好をした、グラマラスな、緑色のショートカットの、青い瞳をした美少女が現れた!
「人が怖いけど、寂しくてお友達が欲しくて、街に出かけていたんだもん!」
「夜更けなら街に出ても、人に出くわすことがないと思って、街中を散歩していたんだけど、たまに人にあってしまうと、思わずさっきみたいな、リアクションをしてしまい、
普通の人間は驚いて、逃げていくんだもん」その美少女は泣きながら話した。
「ふーん、そうなのですね。人は怖いけど、友達は欲しい、と」あかねが美少女を見つめた。
コクっと、その美少女は頷いた。
「じゃあ、私達がお友達になりましょう!ねっ、マスター!」えるが凜にウィンクした。
「ふむ。どうじゃ部長?」凜は、鈴乃に尋ねた。
「そうね」鈴乃は美少女に微笑みながら言った「私は、このグループ―――異世界探検部って言うの。そのリーダーで大谷鈴乃。鈴乃でいいわ、よろしくねっ、幽霊さんっ」
凜は、左手を顔に置いてポーズを取り「コホン。われは漆黒の大王より逃れられぬ宿命を負い、黒猫のミーよりこの地に仕向けられし者、凜と申す。そしてこの者は、われの眷属でえると申す、普段はこの様な姿をしておるが、本性はドラゴンじゃ。える見せてやるがよい」
と、えるに言うと、えるはニコッと笑い、眩い光と轟音と共にドラゴンにメタモルフォーゼした。「よろしくねっ!」とえるは思念で伝えてきた。
「わたしは、小谷場あかね。あかねって呼んでね!」あかねがほほ笑んだ。
そして最後に俺に順番が回ってきた。「俺は異世界探検部のサブリーダーで、円正寺康太って言います。よろしくねっ」と美少女に言った。
泣いていた美少女は、「私はヴァ―ルって言います。幽霊です。人はこわいです。今は思い出せませんが、幽霊になったことに何か関係があるのかもしれません。でも寂しがりやなので、皆さんがお友達になってくださるということで、とてもうれしいです。ヴァールって呼んでください」とニコッと微笑んだ。
(うぉっ、か、かわいい)思わず動揺してしまった。
「お友達になって頂いた人間は初めてです。そのお礼と言ってはなんですが、わたしが探した、財宝を差し上げましょう。」と、ヴァールは言うと、ウィンクし、指をパチッと鳴らし「テザーウルウム」と叫んだ。
すると、竜巻と共に宝箱が現れた。宝箱を見ながら鈴乃はヴァールに言った。「宝箱はうれしいし、ここに来たのは宝探しに来たのは確かだけど、何か違う気がするの。友達になったのは、財宝が欲しいわけじゃないし、ヴァールと友達になりたいと思ったからだけよ。ねっ、みんな」
俺たちは頷いた。
「その財宝は、ヴァールが持っていて、いざという時、出してねっ!」鈴乃は人差し指を立ててウィンクしてみせた。
ヴァールは、コクッと頷いた。
「ところで、このダンジョンは、この先はどうなっておるのじゃ?」凜が尋ねた。
「この先、この迷宮はかなり深いところまで続いていて、わたしもこの先はあまりよく知らないです」ヴァールは肩をすくめて答えた。
「じゃあ、この先行くしかないのう!」凜が鈴乃に行った。
「そうね。進みましょう!」鈴乃が皆に言った。
一同同意し、進むことになった。
「あのう、鈴乃さんお願いがあるんですけど……。」ヴァールは鈴乃に言った。
「なあに、ヴァール?」鈴乃は振り返った。
「ええっと、そのー、言いにくいんですが….。わ私も、いせかいたんけんぶに入れていただきたのですがっ(汗)、や、やっぱり幽霊ですからダメですよねっ。」ヴァールは涙目になった。
「そんなこと、ないわよ!ねーみんな。」鈴乃が言うとみんな頷いた。
「では、ようこそ!異世界探検部へ、ヴァール!」と鈴乃が言った。
皆ヴァールの入部を歓迎した。
「み、皆さんありがとうございますっ。」ヴァールが泣きじゃくりながら言った。
「では改めて出発だな!」俺は皆に向かって言った。
「おー!」と、掛け声が返ってきた。
鈴乃の眩い光が灯る魔法の杖を先頭にさらに漆黒の闇が無限の様に続くダンジョンを奥に向かって歩き始めた。
時折、奥の方から獣の様な叫び声や、怪しく光る獣の瞳が見えた。
「しかし、こう暗くては、左右どころか上下もわからんのう、える?」凜がえるにしがみ付きながら言った。
「マスター、私はドラゴンです暗闇でも、人間でいう昼間の様にものを見ることができます。」えるはこともなげに凜に微笑みながら答えた。
「すごいね!えるちゃん。」えるに反対側にしがみついてるあかねが感心した。