りんけーじ35 えるの飛翔
りんけーじ35 えるの飛翔
ふと、えるが頭上を見上げて叫んだ「ふわぁ~星がすごいですよ!」
皆が空を見上げると、夜の帳が下りた空には、山上の澄んだ空気に星々が煌めいていた。
「星が降ってきそうだな」岸町京子が言った。
「星の瞬きが囁き合っているみたいじゃな!」凜が眼をキラキラさせながら言った。
「これでも、ここから見える星々は、ほぼ地球が属する、天の川銀河の中のものだけなんだ」岸松京子が説明した。
「へ~!さすが先生」みんな岸松京子の説明に感心していた。
ここで、鈴乃が切り出した「皆どうかしら、異世界探検部の本当の活動を、岸町先生にも知ってもらおうと思うのだけど?」
「いいんじゃないですか」とあかねは、ふんふんと首を縦に振った。
「そうじゃな、われも同感じゃ。えるの事も知ってもらいたいものじゃ」凜も同意した。
「わたしは、マスターに従います」とえる。
「そうだな、これからの活動もあるし」俺も同意した。
鈴乃は岸町京子に黒猫のミーとの出会い、指輪のこと、もう一つの世界について説明し、えるのことも話した。
岸町京子は話を聞き終わると、目を閉じ深呼吸した「俄かには、お前たちの話は信じられんが、お前たちの活動を見ているとあながち嘘とも言えん…」
「だがこれだけは、言っておく。危険な事はするな。これは顧問として、将来のあるお前たちを預かる者として当然の指導だ!」と、みんなを見つめた。
「では、先生に信じてもらうために、えるの本来の姿をお見せするのじゃ!」凜はえるに向かって言った。
えるは「はい」と頷き、目の前に魔法陣を展開し、眩い光と共に巨大なドラゴンの容姿を現した。
「おおおおお!な、何だこれは!わたしは、夢を見ているのか!?」岸町京子は尻餅を着きえるを見上げた。
えるが振り返って心の声で言った「わたしは、もう一つの世界の住人です。今は凜様がわたしのマスターであり、ドラゴンライダーです」
「今日は、夜景が綺麗そうじゃ。皆でえるに乗って空からみてみるのじゃ!えるにシールドを張ってもらえば寒さは防げるのじゃ」凜がニコリと笑った。
皆でえるの背中に乗り込むと、魔法なのか磁石の様に、えるの体にお尻がくっ付き離れなくなった。みんながえるに乗ると、透明な半円形のシールドが、ぼうっと張られた。
「皆さん、準備はいいですか?」えるが心の声で言った。
凜がみんなを見回して「大丈夫そうじゃな!える!飛翔じゃ!」と、手を挙げた。
えるは、夜空を見上げると黒い船のマストの様な、羽根を広げ羽ばたいた。周りに風が起こり、草むらをバサバサとなぎ倒した。
徐々にえるの大きな鋭い爪は、地面を離れ宙に舞い上がった。あっという間に地上が遠くなり、星空が広がった。
えるのシールドのおかげでまったく寒さは感じない。
「うわ~!星が綺麗!まるで宝石みたい!!」あかねが瞳を星型にキラキラさせて、胸の前で両手を合わせて言った。
「ほんと、きれいね!」鈴乃が顔を上げ、降り注ぐ星空を見渡した。
暫く飛ぶと雲間から都市の灯りが見えてきた。
凜はえるをそっと撫でてから言った「える、ステルス!」
えるは頷くと魔法陣を展開し、不観測化効力魔法を展開した。
「自衛隊に、スクランブル発進されては叶わんからの」凜はみんなに説明した。
「これは、凄いな…」岸町京子は眼下に広がる煌めく街の灯りを見つめていた。
何かで読んだのだが、都市の夜景は、脳細胞の配列に似ているらしい「感動しますね」俺は言った。
「える、そろそろ戻るのじゃ!」凜がえるを撫でて言った。
えるは「はい!」と頷くと、踵を返した。
キャンプ場に到着すると、えるは細心の注意を払って、静かに着地した。