りんけーじ29 竜と少女
りんけーじ29 竜と少女
店を出ると、凜がキラキラした目でペンダントを見つめ「早速、試したいのじゃ!」と言った。
俺は鈴乃の魔法の杖事件を思い出し額に手を当てた「ここでは、駄目だ。郊外でやらないと!な、鈴乃!」と言うと、「そ、そうね」と鈴乃はバツが悪そうに答えた。
少し歩くと、若草の香が広がる、郊外の草原に出た。
「凜、ここならいいぞ!」俺はペンダントを、大事そうに握る凜に言った。
「おぉ!では、ここで試すか!」と、凜は嬉しそうに言って、はあっと息を吐いた。そして首から下げたペンダントを左手に持ち、右手で優しく撫で「エグゼオ!」と叫んだ。
晴天だった青空が、見る見るうちに掻き曇り、やが生暖かい強風が吹き始め、雷鳴が轟いたかと思うと、天空から竜巻が起こりその先端が、徐々に地上に向かって降りてきた、風は更に強くなり、やがて凜の持つペンダントに竜巻の先端が触れた瞬間、宝石から眩い紫の光が溢れ、視界が一面紫の光に包まれた。ペンダントから光が洪水の様に満ち溢れた。その眩い光はどんどん大きくなり、その中から、巨大なドラゴンが姿を現わした。
俺は吹き飛ばされない様に、大きな岩にしがみついた「おお、ドラゴンだ!」まさか実物にお目にかかるとは、翼が空を遮った。
ドラゴンは凜を認めるなり、顔を凜に摺り寄せてきた。
「おお、かわいいやつよのう。われがそなたに名前を授けよう」凜がドラゴンを撫でながら、満足そうに言った。
「ミャー」と、ドラゴンは甘えた。
ドラゴンはみゃーと鳴くのか?俺は、不思議に思った。
「そなたは、えるじゃ!えるちゃんと呼ぼう」凜は、ドラゴンを抱きしめた。
えるは「ミャー」と嬉しそうに答えた。
「そなたは、かわいいが、町では連れて歩けんな」と凜が言うと。
えるは頷くと、「ガオオオオ」と咆哮し、再び紫の光に包まれた。光は徐々に小さくなって行き、やがて、光が消えると、ピンクの長髪、緑色の瞳をした美少女になっていた。
えるは、全裸だった。
凜はえるを庇い「は、早く服を着るんじゃ!」と言った。えるは、「ふわぁ~」と言い、凜ににっこりと、ほほ笑んだ。「マスター!これからよろしくお願いします。えぇっと…人間の格好になってみましたけど、人間は服というものを着なければならないんですね、では、皆さんとお同じ服装になってみます!」と言い、再び光に包まれると、ウチの高校の制服を着た姿になっていた。
「これなら、町にも連れていけるのう!える!」凜は嬉しそうに笑みを浮かべ、えると手を繋いだ。えるも満足そうに「はいっ!」と答えた。