りんけーじ279 星喰い
りんけーじ279 星喰い
「それにしても、昨夜の夢は何だったんだろう?」そう考え胸に手を当てると、左胸がキラキラと輝き、疼くような感じがした。
「星が入っている!?」俺は、トクトクと鳴る心音を確かめたが、心臓があるべき場所は沈黙したままだった。
「鼓動がしない?」俺は焦り、左胸に手を強く押し当ててみたが、やはり、心臓は動いていなかった。
「心臓が動いていないのに、何故生きているんだろう?」と俺は左胸を見た。
「お前さんどうしたんだい?」その時、宿の老婆がやってきた。
老婆は、俺の様子をじっと見ていた。
そして、わなわなと震え出した。
「お前さん、星喰いにあったな?」老婆は俺の左胸に耳を当てた。
「やはり、鼓動がしない!」老婆は叫んだ。
「星喰い?」俺は聞き返した。
老婆は頷いた。
「ここら辺の星は、すごく綺麗なんじゃが、伝説によると、気に入った者がおると、星喰いをするのじゃ」老婆は説明を始めた。
「星を見ている者があると、星もその者を見ているんじゃ」
「星が見ている者を気に入ったら、その者の胸に取り込むのじゃ」
「胸に取り込む?」俺は繰り返した。
「そうじゃ」老婆は頷くと話を続けた。
「正確には、星が胸の中に入り込み、心臓を取り込んでしまうのじゃ」
「お前さんの状態がそうじゃろう」老婆は眼を瞑った。
「どうしたら、いいんですか?」俺はたじろいだ。
「どうもこうも、お前さんは、星に選ばれたんじゃ」老婆はニコリと笑った。
「これは、めでたいことなんじゃ」老婆は続けた。
「いいか?星に選ばれたと言うことは、先ず、不老不死になったということじゃ」
「そして、星々の膨大な力がお主に宿ったんじゃ」老婆は、嬉しそうに説明した。
「膨大な力…」俺は両掌を見た。
「星々がお前さんを守ってくれるのじゃ」老婆は両手を掲げた。
「お前さんには、宇宙の力が宿っているんじゃ」
「伝説に伝わる、星に選ばれし者になったんじゃ」
「やだ!」俺は老婆に言った。
「普通に戻りたい!」俺は老婆に詰め寄った。
しかし老婆は首を横に振った。
「それは、無理じゃ」




