りんけーじ275 目が覚めた俺
りんけーじ275 目が覚めた俺
「おお、お主も元気になったようじゃな」凜が俺の様子を見に来た。
「ああ、おかげさまで」俺は礼を言った。
「一時はどうなることかと、思ったぞ」凜は続けた。
「鈴乃に感謝するのじゃな。お主が倒れた後、必死に看病してくれたのじゃからな」凜は人差し指を振った。
昨日どうなったかは、倒れて以降記憶は無かったが、鈴乃の気配を感じたのは、そのためだろう。
「ありがとう」俺は鈴乃の温もりを思い出しながら感謝した。
「べ、べつに、あなただけじゃなくて、他の部員がなってても、やったげたわよ」鈴乃は頬を赤らめ答えた。
「あら、起きたんですね!」あかねもひょっこりと顔を出した。
「あなたの体力を回復させるため、もう一泊この宿を取ったわ」鈴乃は腰に手を当てた。
「今日の夜こそ、『きらぼし亭』の名にふさわしい夜空を見ましょう」とあかねが言った。
俺はみんなの話を聞きながら再び眠りに落ちた。
再び目が覚めると、そこには、ヴァールがいた。
「気が付きましたか」ヴァールは俺の顔を見ると嬉しそうにほほ笑んだ。
「食事をとられては如何ですか?」ヴァールは俺の瞳を見つめた。
そう言えば、倒れてから何も食べていないため、空腹を感じた。
俺は頷いた。
「じゃあ、何かお持ちしますね」ヴァールはそう言うと、階段を降りて行った。
俺のおなかは、キュルルルと鳴っていた。
しばらくすると、ヴァールが階段のトントンと登る足音がした。
「これは、食べられそうですか?」ヴァールは両手でお盆を握っていた。その上には、こんがり焼けたパンとコップに注がれたミルクと湯気が立っているクリームシチューが皿に盛られていた。
俺は頷いた。
鈴乃がベッドの横にテーブルを寄せてくれた。
テーブルの上に、食事が並べられた。
「いただきます」と俺は言うと、コップを手に取ってミルクを一口飲んだ。
口の中に、新鮮で滑らかなミルクの甘みが染み渡った。
俺は、熱々の丸いパンを一つ手に取ると、パリッと半分にちぎって、バターを塗った。
パンをかじると、バターのコクと小麦の甘味のハーモニーが舌を通して感じられた。
美味しいパンだ。
次にクリームシチューをスプーンですくって、口に入れた。
ホワイトソースと鶏肉と野菜がじっくり煮込まれて、混然一体となって口の中に広がった。
先週は土日に旅行に行っていて更新ができませんでした。更新を待っていた読者さんすみません。




