りんけーじ269 ゴロトンイノシシのパイステーキ
りんけーじ269 ゴロトンイノシシのパイステーキ
店内に入ると、客は口々にゴロトンイノシシのパイステーキを頼み、美味しいを連発していた。
「ここで頼むのはゴロトンイノシシのパイステーキでええか?」マリスがみんなに尋ねた。
みんな首を縦に振った。
「早速頼もうかのう」凜はそう言うと、ウェイトレスを呼んだ。
「いらっしゃいませ。何にしますか?」ウェイトレスは注文を聴いた。
「ゴロトンイノシシのパイステーキ7人分」と、凜がオーダーした。
「はい。ゴロトンイノシシのパイステーキを7人分ですね」ウェイトレスはメモを取りながら確認した。
凛が頷くとウェイトレスは下がっていった。
「早く食べたいのう」と凜が言うと「おなかぺこぺこです」とえるが返した。
「ここのゴロトンイノシシのパイステーキはまだ出来たばっかりや」マリスが説明した。
「へえ、その割には歴史を感じますね」あかねが答えた。
確かに、店構えといい、中の造作といい、歴史を感じる。
「まだ創業180年や」マリスはウィンクした。
「ひゃくはちじゅうねん?」俺は聞き直した。
マリスは頷いた。
そうか、マリスの年齢で言うと、まだ出来たばっかりなのかと、俺は思った。
同時に「マリスやえるは、一体何歳なのだろうと思った。
そうこうしているうちに、ゴロトンイノシシのパイステーキが運ばれてきた。
「熱いので気をつけてお召し上がりください」と、ウェイトレスは注意した。
プレートに乗ったステーキはジュウジュウと音を立てていた。
「う~ん、美味しそうな匂い」ヴァールが鼻をヒクヒクと動かした。
ゴロトンイノシシのパイステーキとは、こんがり焼き目のついたステーキの上に香草が乗っており、その上焦がしバターが効いた網目状のパイが被さった料理であり、いかにもうまそうだった。
「いっただきまーす」凜はそう言うと、ナイフとフォークを手に取り、ステーキを頬張った。
ステーキを口に入れると、噛み応えは柔らかく、噛めば噛むほど、じゅわーっと肉汁と香草の風味が口に広がった。
「味付けは、岩塩を使っています」とウェイトレスが説明した。
確かにシンプルだが、岩塩の美味しさが、程よい塩加減で効いていた。
「うっまーい!」あかねが瞳を輝かした。
「そうやろ!」マリスが鼻高々に言った。
この町の名物料理と言うのも納得の味である。




