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りんけーじ268 5枚の金貨

りんけーじ268 5枚の金貨


メアリーは少し間を置いた。

「其方が盗ったというものはどれじゃ?」メアリーはアイラに優しく語り掛けた。

アイラは懐から巾着袋を取り出すとメアリーに差し出した。

メアリーはそれを預かると、「これを盗られた者は?」と巾着を高く掲げた。

「はい。それは、私の物です」と群衆の中から男が申し出た。

「これを其方に返そう」メアリーはそう言うと、男に巾着を渡した。

「それで、其方の母親に煎じる薬は如何ほどの金額じゃ?」メアリーはアイラに尋ねた。

「…金貨3枚」アイラは小さな声で答えた。

「誰か金貨を持て」メアリーは御付きの従者に声を掛けた。

「はっ」従者は巾着袋をメアリーの前に差し出した。

メアリーはその中から金貨5枚を取り出すと、そっとアイラに渡した。

メアリーから金貨を渡されたアイラは驚いた「そんな、これでは貰い過ぎです」

「これで、母君に薬と精の付く物でも食べさせてあげなさい」メアリーは優しくほほ笑むとアイラの手を優しく握った。

アイラの瞳からは大粒の涙があふれた。

「あ、有難うございます。メアリー王女様」アイラは礼を言った。

メアリーは、スッと立ち上がると、白馬にまたがり、近衛騎士団を引き連れ何もなかったかの様にその場を離れた。

「何たる、心の広い王女なんじゃ」一連の流れを見ていた凜は、えるの胸に顔をうずめて、感動してもらい泣きしていた。

「何か、この国も捨てたもんじゃないわね」鈴乃が王女の立ち居振る舞いに感動していた。

「いいものを見ましたね」あかねは、頬を赤らめた。

「そしたら、ゴロトンイノシシのパイステーキを食いに行くか」マリスがみんなに言った。

「そうですね。おなかも空きましたし」ヴァールが答えた。

「そうじゃった。お腹が空いて倒れそうじゃ!えるとマリスには栄養補給をしてもらわんといかんしな」凜はお腹をさすった。

「そうですねお腹がペコペコですね」あかねも同意した。

俺たちは、マリスの案内で街中を進んだ。

しばらく歩くと、香ばしい肉の焼いた匂いが漂ってきた。

「美味しそうな匂いですね」あかねが涎を拭った。

「あかねちゃん、やめなさい」鈴乃があかねに注意した。

美味しそうな匂いがどんどん強くなり、みんなつばを飲み込んだ。

マリスが一軒の店の前で立ち止まった。

「ここや!」マリスはそう言うとみんなを中に案内した。

中からジュウジュウと肉汁が滴る音と煙が漂った。


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