りんけーじ261 刻を動くもの
りんけーじ261 刻を動くもの
「ヴァール、できるの?」鈴乃が聞き直した。
「ええ、できると思います」ヴァールは頷いた。
「あいつは、呪文を詠唱した後に、術が発動するまでの間少しだけ間が開きます。その瞬間を狙ってこちらから、反呪文を唱えるんです」ヴァールは続けて説明した。
「それで、ヤツの動きを止められると」俺は確認した。
「3分が限界ですが」ヴァールは瞳を閉じた。
「それだけあれば、こちらから何らかの攻撃が可能ね」鈴乃は顎に人差し指を置いた。
「フェンリルは、元々炎属性の魔獣。だったらヴァールの四大精霊のウンディーネを使った、水魔法か氷魔法が効果的そうね」鈴乃が提案した。
「わかりました。やってみましょう」ヴァールは前に出た。
「フェンリル!次は私が相手です!」ヴァールが叫んだ。
「何度やっても、無駄だと言っているだろう。見ればお前はただの幽体じゃないか。そんなお前に何ができると言うんだ」フェンリルは大声で笑った。
「それは、やってみないと分からない!ウンディーネ出でよ!」ヴァールは右手を高々と上げた。
ヴァールの左手から水がほとばしると、その水と共にウンディーネが現れた。
「ほお、幽体のお前は、精霊使いか?わたしの苦手な水の精霊か?しかし刻の支配者たるわたしにとっては、無力同然」フェンリルはニヤリと笑った。
「やってみなければ、わからない!行くぞ、フェンリル」ヴァールは術式を唱えた「グラチャンス!」
ウンディーネは手から冷気をフェンリルに向かって噴出した。
「スブシスト・テンポス」再び、フェンリルは時間停止の術式を詠唱した。
その瞬間を見てヴァールは、反転魔法の術式を展開した「カウンター・スプレシスト・テンポス!」
フェンリルの術式が展開すると、すべてものが停止した。
フェンリルは攻撃に転じようとした。
しかし、すべてのものが停止した中でヴァールだけは、動いていた。
「な、なんだと!そんな馬鹿な」フェンリルは動揺した。
「やってみなければ、わからないと言っただろう」ヴァールは叫んだ。
「はーっ!」ヴァールは再び右手を上げた。
「グラチャンス」ヴァールは、再びウンディーネを使って氷結魔法を展開した。
「ギャオウン」ウンディーネの攻撃が当たるとフェンリルは苦しんだ。
だが、一発では倒れない。
「わたしは、倒れぬ!今度はこちらから行くぞ!」フェンリルは氷を振り払うと、反撃を始めた。




