りんけーじ250 ヤマイヌの子の最後
りんけーじ250 ヤマイヌの子の最後
マリスの手は光り輝き、光の粒子と共に沸き起こった風が、ヤマイヌの子目掛けて吹いていった。
不思議なことに、光の粒子はヤマイヌの子の体を貫通した。
「ギャオウン」とヤマイヌの子は叫び声を上げた。
「効いてる」あかねが叫んだ。
マリスはそのまま、沸き起こった風をヤマイヌの子に当て続けた。
「あれ見て」鈴乃が、ヤマイヌの子を指さした。
ゾンビの様に骨がむき出しになっていたヤマイヌの子の体は徐々に、治癒されていった。
それと共に段々ヤマイヌの子の体は小さくなっていった。
やがて、傷が癒えたヤマイヌの子は、子犬に変化した。
「元に戻ったのかのう」凜がイヌガミに尋ねると、イヌガミは静かに頷いた。
子犬となったヤマイヌの子はイヌガミに、近づいて行った。
ヤマイヌの子はイヌガミの少女の足元までトボトボと歩いてきた。
イヌガミの少女はしゃがみこむと、ヤマイヌの子の頭を静かに撫で始めた。
ヤマイヌの子は嬉しそうに「キュ~ン」と鳴いた。
すると、ヤマイヌの子の体が輝き始めた。
イヌガミの少女はヤマイヌの子を見つめて、そっとほほ笑んだ。
ヤマイヌの子は徐々に光と共に消え始めた。
やがて、ヤマイヌの子は光の渦となって、消失した。
「成仏したみたいですね」ヴァールがイヌガミの少女に声を掛けた。
イヌガミの少女は消えていく光を見送った。
光の渦が消えるとイヌガミの少女は俺たちの方に振り返った。
「ありがとう」イヌガミの少女の瞳は潤んでいた。
ヤマイヌの子が浄化されたことにより、周囲を覆っていた瘴気は、消え失せた。
「誰もいなくなってしまったこの土地だが、みんなのおかげで、魔物の気配はなくなった」イヌガミの少女は礼を言った。
やがて夜が白々と明け始めた。
「もう朝になっちゃいましたね」あかねが伸びをしながら言った。
「一旦、我らの世界に戻るとするかのう」凜があくびをした。
俺たちは、俺たちの世界に戻ることにした。
イヌガミの少女に別れを告げると、指輪を投げた。
現実の世界に戻ると、部室だった。
しばらくぶりの様な気がして、どこか懐かしささえ覚えた。
「よく眠れなかった分寝るんじゃ」凜は再び大きなあくびをした。
みんなそれぞれの家に帰った。




