りんけーじ246 イヌガミ
りんけーじ246 イヌガミ
ジュウジュウと肉の焼ける煙が辺り一面に広がった。
「いただきまーす」あかねが肉にかぶりついた。
「う~ん、外はこんがり、中はジューシー、塩と胡椒だけで、うまみが引き出されて、肉も柔らかく、野外で食べると、更に美味しさがさらに倍増しますね」
「うむ、たくさん食べるとよいぞ!」凜は満足気に言った。
「ほんとに、美味しいお肉ですね」ヴァールも肉をほおばった。
「ガサガサ」
その時だった。何かが草むらを揺らした。
「ぎゃあ~!出た~」凜は叫ぶと、えるにしがみついた。
「何?」鈴乃は、音のする方へ声を掛けた。
草むらの中で、二つの光が怪しくゆらめいた。
「出たな、イヌガミ!しばいたる!」マリスが、腕をまくった。
「みんな気を付けて!」鈴乃は左手に杖を持ち、右手でみんなを制止した。
二つの光はフラフラと焚火に近づいてきた。
俺も固唾を飲んで光の行方を見守った。
すると、突然パタッと音がして、黒い影が倒れた。
「…ものを…」黒い影が喋った。
黒い影は焚火に照らされていた。
よく見ると、ハーフコートに、毛皮の着いたフードを被っていた。
ハーフコートの裾からは、大きな尻尾がのぞいていた。
「食い物を、くれ…」イヌガミは両手を伸ばすとじたばたした。
「何をやっているんや!イヌガミ」マリスが声を掛けた。
イヌガミは、フードを下ろした。
後ろで赤い髪の毛を束ねた姿だった。
顔を上げると、太い眉毛で目の前ぱっちりした、鼻は小さく、犬歯の大きい美少女だった。
「お、おなかがすいて、力が出ん、食べ物をくれ」イヌガミは、鈴乃の持っている肉を見ると、ヨダレを拭った。
「状況が良くわからないけど、イヌガミは少女で、おなかをすかせているのね?」鈴乃はイヌガミに確認した。
イヌガミは頷いた。
「どうしようかしら?」鈴乃はマリスに確認した。
「せやな…まあとりあえず、食い物を与えて、話を聞いてみるのが、ええかも知れんな」マリスは答えた。
「じゃあ、ほら、これ食べなさい」鈴乃は、自分の持っている肉をイヌガミに差し伸べた。
イヌガミは鈴乃から、肉を受け取ると、「いただきましゅ」と言いながらガツガツと食べ始めた。




