りんけーじ244 山犬鳴き伝説
りんけーじ244 山犬鳴き伝説
俺たちは砂漠を進んだ。
しばらくすると森林地帯に入った。
「やっと、砂漠も脱出ですね」あかねが胸をなでおろした。
やがて、俺たちは谷に出た。
辺りはとっぷりと暗くなり、俺たちは野営をすることにした。
マリスはあたりを警戒すると話し始めた「ここで、野営するんはええが、ここは山犬鳴き伝説の谷や。気をつけんと」
「マリス。その山犬鳴き伝説って何?」鈴乃が質問した。
マリスは一息吐くと話し始めた。
「その昔、ここには村があったんや。結構貧しい村だったそうや。凶作続きで、飢え死にする者もいたそうや」
「ある晩秋のころ、どこからともなく、一頭の山犬が現れて村人たちに言ったんや」
「ワシがこの村に豊穣の実りをもたらすさかい。村の者はワシを敬う祠立てて、豊作になった暁には、年に一度作物の一部を供えよと」
「言い終わると一迅の突風が吹き、それと共に山犬の姿は消えていたんや」
「村人たちは最初驚いたが。山犬は神の使いと言われていたため、山犬の言うことに従うことにしたんや」
「村には、犬神を祭った祠が立てられたんや」
「するとその年、村は豊作となったんや。村人たちは喜び、作物の一部を、犬神の祠に供えたんや」
「不思議なことに供え物は次の日になると、消えていたそうや」
「村人たちはきっと山犬様が、持っていかれたんじゃと口々に言っていたんや」
「山犬を敬うようになってから、村は豊作が続き豊かになっていったんや」
「じゃが、時の経過と共に村人は山犬の存在を忘れていったんや」
「豊作になっても、それが当たり前と思われ、山犬の祠も廃れていったんや」
「そんなある時、村で、奇妙な病が流行ったんや。最初、村に山犬の子供が迷い込んできたんや。汚い犬やと、村人がその子犬を何度も蹴とばしたんや」
「瀕死になった子犬は、一声鳴くと、その村人に嚙みついて、力尽きて死んだんや」
「その晩その村人は高熱を出し、水を怖がる様になったんや」
「そして、恐ろしい形相になり、次々と周りの村人に嚙みついていったんや。噛まれた者は同じ症状を繰り返し、やがて死んでいったんや」
「狂犬病ね」鈴乃は呟いた。
マリスは続けた。
「そんな奇病が流行り、村は凶作にも見舞われ、あっという間にむらは滅んだんや。これがこの土地に伝わる山犬鳴き伝説や」




