りんけーじ21 あかねの特技
りんけーじ21 あかねの特技
部室に戻ると、止まっていた現実世界の時間が動き出した。
あかねは、早速ブレスレットを付けた両手を広げ、デーフェーンシオーと叫んだ。すると、あかねの目の前にシールドがバリバリと音を立てて広がった「はーっ…」とあかねもその光景に見とれていた。確かに凄そうだが、こっちの世界で使うもんじゃないなと俺は思った。
鈴乃もそう思ったらしく「誰かに見られると大変だから、ロッカーにしまっておきましょう」と言った。
ロッカーにブレスレットを仕舞っている時、あかねは、「鈴乃さん、もう一つの世界を探検するのに、地図があるといいですね」と、言った。
「そうね、今度向こう世界に行ったら探してみましょう。」と鈴乃が答えた。
あかねは、ぱちんと両手を合わせた「あっ!そうだ、今度皆さんのコスチュームを、作ってきます!せっかくもう一つの世界に行けるのだから、盛り上げて行きましょう!わたし元々コスプレ衣装を作るの趣味なんですっ」と嬉しそうに言った。
衣装か…確かに最初に異世界に行った時、食堂の店主に俺たちの制服を、見慣れない服装と、怪しまれたことを思い出し、俺と鈴乃は、同意した。
あかねは「では、採寸させてください」と言うと、鞄の中からメジャーと筆記用具を出した。
そして、鈴乃の前に立つと、「失礼しますっ!」と言って、シュルシュルっとメジャーを鈴乃に当てた。
「えっと、まずは肩幅、次は身幅っと…」あかねはテキパキと採寸し、メモ帳に書き込んでいく。
「それじゃ、両腕を開いて下さい」と言うと、鈴乃の両脇にメジャーを走らせた。
「あっ、ここからは、円正寺先輩は、後ろを見てて下さいね」と、あかねは俺に、ウィンクした。
俺は頷くと、ガタガタと椅子を反対方向に動かした。
「バストおーっ、ウェストほーっ、ヒップふむふむ!さすがですねー鈴乃せんぱいっ!」あかねはニヤニヤしながら言っている声が聞こえた。
「ち、ちょっと、あかねちゃん恥ずかしいじゃない!」と、鈴乃は頬を赤らめた。
後ろを向いている俺は、ちょっと聴き耳を立ててしまった。
「大丈夫ですよー乙女の秘密は守りますよっ!」と、俺の方を見ながら、あかねは言った。
「よしっと、もういいですよー!次は、円正寺先輩!ちょっと、こっちに来てください」とあかねから声が掛かったので、後ろを振り返ると、ちょいちょいと手招きしていた。
「それじゃ、測りますからねっ」と言い、あかねはメジャーを持った手を、俺に回してきた。
ち、近い。さわさわと女の子に触られる感覚…あかねが動くたびに、髪の毛からふわっと、いい香りがする。俺は鼓動が速くなり、顔が赤くなっていくのが判ったが、嫌な感じではない。これは、健全な男子高校生の反応だ。
その時、あかねチラリと俺の赤くなった顔を見て「あー!円正寺せんぱい、あかねが魅力的だから今、変なこと考えていたでしょう!」と言った。
「ち、違うから!そんなこと考えてないから!」と反論する俺の顔は、更に赤くなっていた。
俺の反応を見たあかねは、クスっと小悪魔的に笑った。
あかねはテキパキと採寸を進め、「はい、測り終わりましたよ」とメモをとりながらニッコリと笑った。
そして、今日は帰ることになった。
「お腹が減りましたね。帰りにワクドナルドに寄って行きませんか?」あかねがお腹を擦りながら言った。
「う~ん、いっぱい動いたからお腹がペコペコね!」と、鈴乃が伸びをしながら答えた。校舎を出ると、晩春の生暖かい風が、夕陽に染まった一面の菜の花を揺らし、春の終わりの香りを、漂よわせながら、幻想的は風景を作り上げていた。