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りんけーじ206 フィナの見せた幻

りんけーじ206 フィナの見せた幻


辺りはしんと静まり返った。

上半身だけになったフィナはゴホッとせき込むと、すうっと一度深呼吸をした。

そして、再び大空に向かって、歌を歌い始めた。

「フィナ…」俺はフィナに声を掛けた。

人間だったらとっくに命を落としている状況だ。

体中がジジジとショートしているフィナを見るのはいたたまれなかった。

フィナの美しい歌声はとぎれとぎれとなる瞬間が多くなっていった。

瞳もうつろになっていく。

フィナは首を振ると、歯を食いしばり、残された最後の力を振り絞り、歌を歌い続けた。

その時、歌声は奇跡を呼んだ。

シュラの前に、フィナの歌声の虹と共に、死んだはずの父と母が幻影となって現れた。

「ち、父上、母上…」シュラの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。

シュラの前に現れた父母は手をつないで優しくほほ笑んでいた。

そして二人はシュラを優しく抱いた。

「父様、母様…」シュラは、懐かしい父母の優しい温もり包まれた。

父と母はシュラに囁くようにつぶやいた「ああ、愛おしい娘、シュラよ!私たちのことで、これ以上悩まないでおくれ。命を大切にし、もっと自分のため生きてほしい」

シュラの顔面は涙でクシャクシャになった。

同じように、ヴァルドアの前にも、妹が瞳を閉じて、たたずんでいた。

ヴァルドアと妹クラウディアは抱擁した。

「クラウディア!生きていたのか?」ヴァルドアは目の前に現れた妹に向かって叫んだ。

クラウディアはニコリとほほ笑み首を横に振った。

ヴァルドアも頭の中では、それは、分かっていた。

しかし、心の中では、いちるの望みを捨てきれなかった。

クラウディアは口を開いた「ヴァルドア姉さま、もう私のことで、そんなに苦しまなくて、いいんですよ。これからは、自分のために生きて私の分まで長生きして」とヴァルドアに優しく手を差し伸べた。

「ク、クラウディア」ヴァルドアの瞳からは大粒の涙がぽたぽたと、したたり落ちた。

フィナの瞳からは輝きが失われていた。もう周りのものも見えなくなっていた。

歌で、つかの間の幸せな幻を見せたフィナに終わりが近づいていた。

フィナの動力源も底をついてきていた。

それでも、なんとかフィナは歌い続けた。

それを察する様にシュラの両親とクラウディアはそれぞれ別れが近づいていることを告げた。

やがて、フィナの動力はすべて停止した。


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