りんけーじ204 フィナの覚悟
りんけーじ204 フィナの覚悟
「全軍前へ!」シュラは、剣を振り下ろした。
シュラの掛け声と共にガルニ王国軍は前進した。
「遅れを取るな!ボルディア帝国進め!」
ガルニ王国軍の動きを察知したヴァルドアも進軍させた。
両国の大軍勢は全面衝突しようとしていた。
「両軍が激突すれば相当な被害がでるだろう。何とか止める手立てはないものか?」俺はマリスの海竜に乗りながら、えるの地竜と上空を旋回しながら、手をこまねいていた。
その時、下でフィナが手を振って叫んでいた。
「円正寺さん、お話があります!」
俺は、マリスを地上に降下させた。
「何だ?フィナ」俺は尋ねた。
「私に考えがあります」フィナは続けた「私を、両軍の真ん中に連れて行ってもらえないでしょうか?」
「それは自殺行為だ!」俺は止めた。
「いえ、わたしは、大丈夫です。わたしは、両国の戦闘を止めさせ、この町に平和を取り戻したいんです!」フィナは苦し気な顔をして胸に手を当てた。
「でも、それは、無茶だ!いくら俺達でも、防ぎきれない」俺は再度止めた。
フィナはすうっと息を一気にしゃべった「わたしは、オートマタです。わたしが、倒れても一つの機械が壊れるだけです!」。
「そ、そんな、バカな!いくら機械と言っても人口生命体だって、一つの命じゃないか。命の重さに変わりはない!」俺は首を振った。
「でも、でもいいんです。私でなければこの戦いは止められないんです!どうか、お願い!私を連れて行って!」フィナの瞳は悲し気だったが、内に秘めた強い信念が感じられた。
「フィ、フィナ…」俺は、首を縦に振らざるをえなかった。
「ありがとう…」フィナは俺を優しく、抱きしめてほほ笑んだ。
俺の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちた。
「さあ、ではお願いします!」フィナはそう言うと、えるにまたがった。
俺はうなずくと、マリスを上空に飛ばした。
俺は、徐々に接近する両軍の真ん中にフィナを降ろした。
フィナは、本当に嬉しそうに、飛び立つ俺たちを見送った。
戦場の真ん中に一人ポツンと立つ少女は妙に不釣り合いだった。
フィナは胸に左手を当てると、すうっと息を吸い込んだ。
そして、両手を広げると歌を歌い始めた。
「くっ!またあの歌か!!」シュラとヴァルドア同じタイミングでつぶやくと、「全軍あの歌を歌っている者を攻撃しろ!」と命じた。
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