りんけーじ203 シュラとヴァルドア
りんけーじ203 シュラとヴァルドア
鈴乃が振り下ろした杖からは、電流が流れ、ボルディア帝国の歩兵に命中して、しびれさせた。
その間にフィナは歌を歌い、より遠くに響かせるように、ヴァールは風の精を召喚させフィナの歌声を、その風に乗せた。
歌声は響き渡り、虹となって絶望に満ちた人々の心に降り注いだ。
その歌声は、心に、安らぎと温もりを与える、心地の良いものであった。
「何だあの歌は、やめさせろ!聞いていて気分が悪くなる」ガルニ王国軍の女司令官シュラは耳をふさいだ。
ガルニ王国軍は、大量の矢と砲弾をフィナに浴びせかけた。
「デーフェンシーオ!」しかし、あかねがフィナを守っている。
あかねは強力なシールドを展開し、撥ね退けた。
「ゴット・ヴィント!」その間も、俺は、ガルニ王国軍の弓兵、砲兵を上空から蹴散らせて行った。
ボルディア帝国軍の、女騎士団長ヴァルドアも耳をふさぎながら、「全軍、歌を歌っている者に攻撃開始!」と叫んだ。
ガルニ王国軍の攻撃もあかねのシールドで防がれた。
鈴乃も魔法で、王国軍を徐々に弱体化させていった。
その間も、フィナの歌声は風の精の風に乗り四方に広がっていった。
「ウワァアアア!やめろ!やめてくれ!」ガルニ王国軍のシュラは耳を押さえてもだえ苦しんだ。
そして、剣を支えに何とか立っていたが、やがて意識を失い、その場に倒れこんだ。
「司令官、大丈夫ですか?」周りの部下が心配して駆け寄った。
気を失ったシュラは、夢を見ていた。
その夢は、シュラがまだ小さかったころ、平和な時代の夢だった。
父と母から慈愛を受け、まだシュラが温かい心を持った時代だった。
その後、ガルニ王国はボルディア帝国との間で小さな領地をめぐって些細なイザコザが起こり、その戦火は徐々に拡大し誰も、止められないまま、長い間戦争を繰り広げる様になった。
やがて、父は戦士し、母も戦渦に巻き込まれ亡くなった。
「―――わたしは、わたしは、父と母を殺したボルディア帝国が憎い―――」
シュラは意識を取り戻した。
その瞳には大粒の涙が光っていた。
ボルディア帝国のヴァルドアも同様にフィナの歌声に苦しみ、騎乗していた装甲馬から、とうとう落馬した。
ヴァルドアもこの戦いで、妹をガルニ王国の兵士に凌辱され殺されていた。
「わたしはガルニ王国を許さない。妹の仇を取るまでは!」と心に刻んでいた。
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