りんけーじ201 絶望の淵
りんけーじ201 絶望の淵
その少女はオートマタとは思えない美少女で、その息遣いは生きている人間そのままだった。
「この町は、今滅びようとしています」フィナ表情は物憂げだ。
「この町は長年の戦争で疲弊し、人々の憎しみや悲しみなどの心によって、希望が忘れ去られ、その負のエネルギーの蓄積により、この世界は崩壊していきます」
「上空から見たが、黒い穴がそうなのか?」俺は確認した。
フィナは頷く。
「わたしは、歌をうたうことによって、人々の心に希望を思い出させ、世界の崩壊を食い止めています」フィナは、瞳を輝かせた。
「しかし、そのことを良く思わない人間もいて、その人間たちは私を破壊しようと狙っています」
「でも、わたしは歌い続けます。この世界の滅亡を防ぐため」
その時、ゴゴゴゴという音と共に地震が起こった。
「なんじゃ?」凜が叫ぶ。
「絶望の淵が広がっているのです」そう言うとフィナは、すうっと息を吸い込み目を閉じた。
そして瞳を開くと、歌を歌い始めた。
その歌声は、温かみがあり、慈愛に満ちていて聴いている者の心が動かされるものだ。
フィナの歌声は、空気を震わせ、振動した空気は、虹となって周囲に広がった。
その虹は、四方に降り注ぐと、ピカピカと輝かせた。
光に覆われたガレキは、ムクムクと持ち上がると、元の街並みを復元していった。
そして、その虹は、ポッカリと空いた穴にも、降り注いだ。
降り注いだ穴は修復されていった。
だが、絶望の淵は巨大だった。
「危ない」俺は叫ぶとともに剣を抜いた。
突然ヒュンという音と共に、フィナの傍に何かが飛んできた。
俺は間一髪のところで、それを叩き落した。
それは矢だった。
自分でもその反射神経に驚いたのだが、こちらの世界で活動する様になってから、全体的な能力が著しく向上しているらしい。
「ありがとうございます」フィナはニッコリとほほ笑んだ。
「わたしを狙う者の仕業でしょう」フィナは悲し気な笑みを浮かべた。
「この様にわたしはこの町を絶望の淵から救うべく、日々歌で戦っているのです」
フィナは続けた「この町の全ての人々が、希望の心を取り戻した時、絶望の淵は閉じるのです」
「ミーは、それまでフィナを守って、この世界の崩壊を止めて欲しいと言うことか」俺は心の中でつぶやいた。
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