りんけーじ2 指輪
りんけーじ2 指輪
「ミー、もう少し話を聞かせてくれ。今の生活がどう変わるんだ?」俺は、ミーの前でしゃがみ込んだ。
ミーは答えた「ふふーん!康太も興味があるみたいだね。今生活している世界が唯一の世界では無く、同時にもう一つの世界が存在するとしたら…。君は興味があるかい?」
確かに俺は幼い頃からミーの言うもう一つの世界というものの感覚を感じていた。
はっきりとはわからないが、「ぼんやりと感じる」のである。その感覚はふとした時に感じられるものであり、その世界については、それ以上踏み込むことはできなかった。
しかし、その世界を俺は感覚として存在を捉え、手の届かない幻の様なものと思っていた。そんな世界を覗いてみたいと言う興味もあった。
「ミー。どうすれば、その世界に行けるんだ?」
ミーは答えた。「では、ぼくがその世界と繋がるトビラとなるものを君にあげよう。ぼくの首輪を見てごらん。指輪がついてるだろ」
俺は、ミーに近づき首輪を見た。
確かにミーの首輪には、真ん中に青いひし形の宝石が埋め込まれた、不思議な模様が刻まれた金色の指輪下がっている。
ミーは言った「これを、君にあげよう!」
俺は、ミーの首輪から指輪を取り、沈みつつあるオレンジ色の夕陽にかざしてみた。
金色の指輪が夕陽に照らされて輝き、青い宝石は底知れぬ湖の様な、吸い込まれそうな色を湛えていた。
ミーは言った「もう一つの世界のトビラを開けるには、この指輪を地面に打ち付けてみるといいよ!その瞬間にトビラは開かれ指輪は、君の指に戻るよ!この世界に戻る時も同じだ」
ミーが話終わると同時に、再び強風が吹き、桜の花びらを散らした。
「あっ!」と叫び咄嗟に俺は眼を閉じた。
風が止み、再び眼を開けるともうそこにはミーはいなくなっていた。
「もうひとつの世界…」「指輪」は俺の手に残った。
家に帰り、夕食を食べ、風呂に入り、ベッドに就いた。
ふと、夕方の出来事を思い出し、あれは夢じゃないかと思えてきた。
そう思うと、机に転がしていた指輪が気になり、確かめてみると、確かに指輪はそこにある。
「夢じゃない」俺は指輪を手に取ってみた。
青色の宝石が暗闇の中でキラキラと深く燃える様に輝いている。
恐る恐る、指輪を人差し指にはめてみた。
が、何も起こらない。
考えを巡らせているうちに、いつも間にか眠りに落ちていた。