りんけーじ176 ヴァールの選択
りんけーじ176 ヴァールの選択
リアはじっとヴァールの瞳を見つめていた。
その後、ニコッとほほ笑むと、ヴァールの傍を離れ、タッタッタと、再び花を探しに行った。
「野生のヴィデ・ブルー・リリウムは1株しかないわ次の花が現れるのは100年後か1000年後か」マーシュが呟いた。
ヴァールは青い花に瞳を落とした。
この花は1輪だけだ。この花の蜜を飲めば、自分は人間に戻れる。
だけどわたしが人間に戻るということは、この幼いリアは幽霊のままだ。
私の人生は動き出すけど、小さな無邪気にリアの人生はこのまま...。
そんなこと、私にはできない。リアにもっと人生を歩んでもらいたい。
リアにもっと人生の楽しさを経験してもらいたい。
ヴァールは花をしばらく見つめた後、はーっと息を吐いた。
そして意を決したように、マーシュに確認した。
「この花の蜜を飲むことによって、死者は新たな命を授かる。でいいのよね?」
マーシュは黙ってうなずくと、花の蜜掬うための匙をそっとヴァールに渡した。
「リア!おいで」ヴァールは、リアに声を掛けた。
草むらに潜り込んでいたリアは声に振り向いた「なあに、ママ?」
ママと呼ばれたことに一瞬驚いた。自分はリアの母と言うには若すぎる。
リアは、トコトコと歩いてくると、ヴァールの足に抱き着いた。
この子はいつ亡くなったんだろう?ひょっとしたら、母親はもうこの世にはいないかも知れない。
この子の母親が見つかるまで、この子の母親でいよう。ヴァールはそう心に決めた。
「リア!ママがね、特別においしいお菓子をあげます」ヴァールはしゃがみこむと、手に持った匙でヴィデ・ブルー・リリウムのほんのわずかな蜜を掬った。
リアはうなずいた。
「ヴァールそれでよいのですね?」マーシュが確認した。
ヴァールは背を向けたまま頷いた。
「はい、リアあーん」ヴァールが匙で掬った蜜は金色にキラキラと光り輝いていた。
リアはあ~んと大きい口を開くとヴァールが持った匙をほおばった。
リアは瞳をキラキラさせ「ママ甘くて、おいし~い」と嬉しそうだった。
リアが蜜を飲んでもリアに変化は起こらなかった。
その時だった「ママ、体がポカポカする」リアはそういうとふらついた。
ヴァールはあわててリアを抱き上げた。
リアはヴァールの胸の中で、虹色に輝きだした。
ヴァールは冷たかったリアの体温が上がっていくのが分かった。
「ママ…」リアはヴァールにきゅっとしがみついた。




