りんけーじ156 マリスの三つの道
りんけーじ156 マリスの三つの道
俺はカララと扉を開けるとヴァールとマリスと共に放課後部室に顔を出した。
夏休みの校舎は吹奏楽部の楽器の音が響いているだけで、今日は運動部は休みなのか、校舎内はしん静かな匂いがした。
鈴乃は窓際の席に座って静かに本を読んでいた。
時折窓から入って来る風がカーテンを揺らし、鈴乃は時折片手で髪の毛を耳元で押さえていた。
「やあ」俺は声を掛けた。
「おはよう」鈴乃は俺たちに気づくと、顔をちらとだけ見上げ、すぐ視線を本に戻した。
しばらく沈黙が続くと、鈴乃は喋り始めた。
「それにしても、フレデリカさん無事成仏できてよかったわね」
「不思議な話だったよな」俺は鈴乃に答えた。
「そう言えば、ヴァールって幽霊よね!?」鈴乃はヴァールに訊ねた。
ヴァールは頷いた。
「あなたは成仏しないの?」鈴乃は唐突に質問した。
「わ、わたしは、成仏したくない。この世でまだ活躍したい!」ヴァールは首を振った。
「ヴァールはどうして幽霊になったの?」鈴乃は質問を続けた。
「よく分かりません..思い出せないなんです」ヴァールは思い出そうとしていた。
「その話、前にもちょこっと話したんやけど、ヴァールはんの進むべき道は3通りあるんや!」マリスが話に加わった。
「どういうことですか?」ヴァールは訝しげにマリスを見た。
マリスは人差し指を立てた「一つ目は、今までどおり幽霊としてこの世を彷徨う」
ヴァールは頷いた。
「二つ目は、この世に未練が無くなり浄化されて、成仏する」マリスは二本指を立てた。
ヴァールは首をブンブンと横に振った。
「三つ目は、これはちょっとしんどい事なんやけど生身の肉体を手に入れる…」マリスは三つ目の指を立てた。
「つまり、生き返るちゅうことやな」マリスは腕組みした。
「生き..返る」ヴァールは、眼を見開き、たじろいだ。
「マリスが以前、海に行った時に言っていたことね」鈴乃は思い出した。
「どうやったら蘇らせられるんだ?」俺はマリスに言った。
マリスはやはり、そうきたかと言った表情で「ちょっと、しんどい事なんやけどな」と繰り返した。
「是非聞きたいです!」ヴァールも前のめりになって、顔をマリスに近づけた。




