りんけーじ15 英美里
りんけーじ15 英美里
pipipi…時計のアラームが鳴った。もう朝か…。ベッドでうつらうつら、としていると、突然どさっと、何かが腹の上に落ちてきた。
「うぐっ!」一瞬息が止まった。また例のパターンか?「起きろー!お兄ちゃん!もう朝ですよー!学校に遅れちゃいますよー!!」妹の英美里だ。市立もみじが丘中学3年生である。
この場合、エロゲでは、ドキドキのシーンで描かれるが、実際は何の感情を起こらない。家族であり生まれてから成長を共にした妹は妹だ。
「わかった、わかった。今起きるよ!」と言い、妹をどかした。
顔を洗い、着替えて食卓に行くと、コーヒーとパン、ベーコンエッグ、サラダにヨーグルト、フルーツが用意されていた。
「さあ、お兄ちゃん!ちゃんと食べなきゃだめですよ!」と英美里は言った。
兄の俺が言うのも何だけど、良くできた妹である。
机に着くと「いただきまーす!神様、妹様いつもすみません!」と、俺は言った。
「よしよし召し上がってよいぞ!」英美里はニコニコしながら答えた。
朝食を食べ終わると、食器を片付け洗った。食事を作ってもらったのだから、これくらいは、当たり前だ。
食器を洗っていると「ありがとう、お兄ちゃん」と英美里の声が背中から聞こえた。
「こちらこそ、美味しい朝食を作ってくれてありがとう」と、俺は答えた。
玄関で、「行ってきまーす」と、俺が言うと英美里の「いってらっしゃーい」と言う声が返ってきた。
さて、今日も1日の始まりだ。しかし依然の生活とは違い、もう一つの世界の探検が俺には待っている。
授業が終わり、部室に行ってみると、鈴乃がいた。
鈴乃は、魔法の杖の解説書を読んでいた。邪魔しちゃ悪いと思い、そっとイスに腰かけた。
熱心に本を読み耽る、鈴乃の横顔を思わず見つめてしまった。長い髪、長い睫毛に大きな瞳、程よい高さの鼻、柔らかそうな唇はほんのりピンク色で西日を受け輝いて見える。
「うーん。なかなか難しいわね」鈴乃が独り言を呟くと、視線をこちらに向け「あら、円正寺君来てたの」と、言った。
一瞬ドキッとして、鈴乃から視線を外し、ちょっと赤くなってしまった。俺は黙って頷いた。
「あら、わたしを見つめて、変なこと考えていたんじゃないでしょうね!?」鈴乃は、ジロリと俺を見て言った。
「な、何を言ってるんだ!杖のことが気になったんだ!」と、俺は取り繕った。
「ふーん、まあいいわ。この本を読むと、杖の使い方もいろいろあって、難しいみたいね」と、鈴乃は答えた。