りんけーじ141 トロール
りんけーじ141 トロール
「トロールだっ!」俺は叫んだ。
「ふんっ!どうも人間臭いと思ったが、どれ食っちまうぞ!」トロールは舌なめずりした。
「トロールに有効なのは…」鈴乃はリーヴァに目配せした。リーヴァは相槌を打った。
「トロール、わたしがお相手しよう!」リーヴァが一歩前に進み出た。
「あーっはっはっ」トロールは雷の様なゴロゴロとした声で笑った。
「こんなに、ちびっこいやつ指でつまんで頭から食ってやる」トロールはガラガラ声で叫んだ。
「ほお、私が小さいとな…」リーヴァはにやりと笑った。
「こんなちびすけなんぞ、全く怖くないわ!」そう言うと、毛むくじゃらの両手を広げ、リーヴァを捕まえようとした。
ところが、リーヴァはスルッと、トロールの手の間をすり抜けた。
捕まえたとものだとばかり思っていたトロールは、からっぽの腕の中を見て、驚き辺りをキョロキョロと見回した。そしてリーヴァを見つけると、再び捕まえようと爪の伸びた岩の様な手を伸ばしたが、リーヴァはその度にすばしっこくトロールの腕の間をスルスルとすり抜けた。
「あはは、鬼さんこちら!手の鳴る方へ」リーヴァはトロールをからかう様に誘った。
「この、ちびめ!ちょこまかと」トロールは真っ赤な顔をしてカンカンに怒った。
その後もリーヴァはちょろちょろとトロールの周りを走り回り巧みにかわしているうちに、追いかけていたトロールは、段々と目が回ってきた。
とうとうトロールは足がもつれて、その場にズズーンと、倒れ込んでしまった。
倒れ込んだトロールは何かをわめきながら、手足をじたばたとして悔しがった。
「じゃあ、そろそろ終わりにするよ!」リーヴァはそう言うと、すうっと息を吸い込み、頬を膨らませた、次の瞬間、口から大量の水を噴き出した。
「リヴァイアサンの咆哮だ!」それを見た瞬間俺は直ぐにわかった。
俺たちが以前巻き込まれ、かなり遠くに飛ばされた、恐ろしい潮流だ。
水流にトロールは巻き込まれて行った。
次にリーヴァは空に円を描いた。すると空間にぽっかりと穴が開き、その中に吸い込まれていった。
トロールは何かをわめいていたが、水流はトロールを巻き込みながら、リーヴァの描いた穴に吸い込まれて行った。
全てが吸い込まれると、やがて静かになり、穴も徐々に小さくなっていき、やがて消滅してしまった。
そして何もなかったように、螺旋階段の蝋燭だけが静かに、揺らいでいた。
「一体何だったんだろう?」一瞬みんな頭に疑問符が浮かんだ。
「さあ、上に急ぎましょう」鈴乃がみんなに声を掛けた。




