りんけーじ128 城塞の中へ
りんけーじ128 城塞の中へ
城門は堀に開閉式の橋が渡してあり、橋の両側は煌々と松明で照らされていた。
リザードマンたちは、橋の岸側の両端に立っていた。
ヴァールは一番近い木の上の枝に移動した。
「しっかしウチのボスも、あかねとかいう人質には、タジタジだな~」リザードマンAが言った。
「ああ、確かにどっちがボスかわからねーよな」リザードマンBが返した。
「あかねのご機嫌取りで必死だぜ」リザードマンAが答える。
「あの、人質確かに機嫌を損ねると大変だしな」と、リザードマンB
「癇癪起こすと手の付け様がないらしいぜ。一度ボスが機嫌を損ねた時は、ボスが泣きながら土下座して謝ったていう噂だぜ」リザードマンAが言う。
「ウチラみたいな末端には、噂しか聞こえてこないが、人質の人選を間違ったんじゃねーか」リザードマンBが答える。
「ほんと、それな!!」リザードマンAが相槌を打った時だった。
「誰だっ!?」リザードマンBが、ヴァールのいる木の枝を見て叫んだ。
急にびゅっと風が吹き、ヴァールは空中に浮遊していたため、ふわっと飛ばされ、その拍子に、透過していた体が一瞬、実体化してしまった。
慌ててリザードマンAも持っていた槍を構え直した。
ヴァールは直ぐに、再度体を透過させた。その瞬間幸運な事に、ヴァールを霧が覆った。
「…」リザードマンAは目を細めて、リザードマンBが見ていた辺りを見回したが、そこには霧が広がるのみだった。
「何も見えないが」リザードマンAがリザードマンBに話しかけた。
「う~ん、確かにあの枝の間に、人影が見えたんだが…」リザードマンBはフーッと鼻を鳴らして、ヴァールの方を凝視した。
「ひ~っ!!」ヴァールは涙目になりながら必死に気配を消した。
「おかしい、見間違えか!?」リザードマンBはブルブルと顔を振った。
リザードマンたちはまた元の位置に戻った。
「あかねちゃんも探さないと」それを、確認したヴァールは、静かに、フワフワと動き出した。
ヴァールは、リザードマンたちに気づかれない様に上空を飛んで、透過したままそっと、城門を潜り抜けて行った。
城門を通過すると、上に向かってらせん状に階段が広がっており、上層の方はよく見えなかった。
要所要所に屈強そうな守衛が配置されており、正面突破は無理そうな感じである。
「よしっ!このまま上に」ヴァールはフワフワとサイの顔をした、守衛を横目に見ながら、上層へ進んで行った。




