りんけーじ120 初めて見る花火
りんけーじ120 初めて見る花火
「く~っ!、われがあの様なものの魔術に引っかかるとは…」凜は、悔しそうに左手で顔を覆った。
こんな時でも中二病心は全開らしい。
「おいっ!人をマジシャンみたいに言うな!」リーヴァは口から唾を飛ばす様な勢いで怒った「私は海を統べる魔王だぞ!」。
「コホン!」とマリスは咳払いした。
「ひいぃ!」それを聞いたリーヴァは一瞬たじろいだ「ま、まあ、海の女神には、同レベルというか…」
「ほぉ~、あんさんこのわらわと同レベル言うんか?」マリスはチラッとリーヴァを睨んだ。
「ひ、ひいい」リーヴァは涙目になり「わわかった、海の女神には叶わんが」と訂正した。
えっ!?それを聞いて俺はふと考えた。マリスはリーヴァとレベチらしい。
リーヴァのうろたえ様からすると間違いない。とすると、マリスに負けたことの無い、えるって―――俺たちが見たのは2人がまともにやったのでは、周囲に甚大な被害を及ぼすと言うことで、釣り対決だったが、古の時代には、ガチの戦いで、えるが勝利したらしい。
この事実からすると、えるのスペックは計り知れない。普段、凜の世話を焼いている、えるを見ていると、まるで駄々っ子の妹を抱えた優しい姉の様な感じしかせず、その様はものとは全くかけ離れた存在にしか見えない。そんな事を考えながら、えるのことを見ていると、
「!?何でしょうか」と、えるもこちらの視線に気付いた様で、ちらと視線を合わせニコッと微笑んできたが、俺は何とも言いようのない感覚に襲われ、―――それは、草食動物が肉食動物から本能的に危険を感じる様な感覚か…?俺は慌てて視線をそらした。
そうこうしている内に花火打ち上げの時刻となり、開始を告げる女性のアナウンスが流れた。
それを合図にドーンと言う音が辺りに響き空気が震えた。
「な、!?」ローリィは一瞬ビクっとし、マリスにしがみ付いた。リーヴァもマリスにくっつき3人は一塊となって見ていた。
マリスたちも異世界ネットとやらで、こちらの情報は仕入れているだろうが、実際目の当たりにした臨場感は別物だったのだろう。
花火は光の線をなびかせながら、空中に舞い上がり、やがて、二度目の炸裂音と共に、夕闇の夜空に色とりどりに、巨大な光の円を作って広がっていった。
3人と、異世界から来た、える、ヴァールも、その様子に首がまるで引っ張られる操り人形の様に一斉に下から上に動いているのがちょっと観察していた面白かった。
花火が大輪の花を夜空に咲かせると、各々の瞳にもその、光景が輝いていた。
しばらくみんな、その光景にキラキラした瞳で沈黙していたが、やがて「なんて綺麗なんでしょう」とヴァールのうっとりとした声にみんな共感している様だった。
花火の一瞬の光が消えた夜空には火薬の煙が広がり、やがて地上にいる俺たちにも煤けた香が漂ってきた。




