りんけーじ114 ダメゼッタイ!
りんけーじ114 ダメゼッタイ!
「あんた!このお金どうしたの?」鈴乃は、リーヴァを睨みつけた。
「ふっふっふー!」リーヴァは腕組みすると、眼を閉じ密かに笑い声を上げた。
「聞いて驚くな!これは私が魔力により作り上げたのだー!」リーヴァは1万円札を1枚掴むとビシッと鈴乃に向け突き出しドヤ顔になった。
「魔力で作ったって…、どうせそんな事だろうとは思ったけど」鈴乃は、リーヴァから1万円札を取り上げると、裏表ひっくり返し、ライトに掲げて、透かしを確認したりしていた。
「どうだ!素晴らしい出来具合だろう!この国の通貨を異世界ネットを通じて、隅々まで研究し、寸分違わぬものを作りあげたのだ!」リーヴァは得意げに鼻に手を当て、「こんなもの、いくらでも作れるから、何ならお前たちにも分けてやるぞ!」と、自慢げにあかねに向かって札束をピラピラさせた。
「ええっ!くれるの!?」あかねは瞳をキラキラと輝かせた。
「ふーん、本物そっくりね!」鈴乃は冷ややかに感想を言うと、徐に魔法の杖を取り出し、「フォーリウム!」と手に持った札に向かって叫んだ。
すると、1万円札は木の葉となり、ヒラヒラと地面に舞い落ちた。
「な、何をするのだー!」それを、見ていたリーヴァは青ざめた顔になり、涙を流して叫んだ。
「あ、ああ1万円札が!!」あかねも、鈴乃の一連の行動に涙目になった。
「刑法第148条第1項及び第2項の通貨偽造及び偽造通貨行使罪で無期または3年以上の懲役よ!こんなの、駄目に決まってるでしょう!」鈴乃は、そう言うとリーヴァが持っている1万円札もすべて木の葉に変えてしまった。
「な、なんてことをしてくれたのだ!これでは、タコヤキが食べられないではないかー!!」リーヴァは悔しそうに涙の流しワンワンと大声で泣き出した。
「あかねちゃんもそれくらいわかるでしょう!?」と鈴乃があかねを窘めると、あかねもシュンとなって頷いた。
さすがは、特進クラスの鈴乃、刑法がスラスラと出てくるとはと感動していると、「ちゃんとした、お金を使って買えばいいのよ!」と言うと、鈴乃は屋台に近づき「おじさんたこ焼き2つください」と言って、懐から財布を取り出した。
事の経緯にあっけに取られていた屋台の店主は、鈴乃の声でハッと我に返ると、首をプルプルと振り、両手でパンパンと自分の頬を叩いた。
「へ、へい!たこ焼き2パックで千円!」というと、たこ焼き機の1個1個に専用の刷毛で油を塗り、生地を流し込んでジュワーっと、焼き始めた。
その音を聞いた途端、リーヴァは泣き止み、店主の一挙手一投足に見入った。
店主はリズミカルにタコを散らし、天カスを振りまく。
次に、ワケギのみじん切りと、紅ショウガのみじん切りを手慣れた手つきで散らした。
「まるで、魔法のようだな」リーヴァは滴る唾をのみ込んで、凝視していた。
その間もタコ焼き機からはジュウジュウと生地の焼ける音が響く。さらに店主は、
たこ焼きの生地を円を描く様に流し込んだ。
丸い穴が開いていたタコ焼き機はみるみる生地で埋まり、まるで大きな1枚の板の様な形になった。
四角い板からは、出汁が効いた生地が焼ける美味しそうな匂いが広がっていった。
「はあ、もう我慢できん!今すぐ食べたいのだ!!食べたいのだ!!」とリーヴァがだだをこねた。
「お嬢ちゃん!もうちょっと待ってナー」と店主がウィンクした。
しばらくすると、鉄板からはうっすら、白い煙が立ち昇り始めた。それを合図に店主は、クルクルと両手に千枚通しを持つと、生地をシュッシュッと分け始めた。そして両手の千枚通しを器用に使い、カンカンとたこ焼きを1個また1個とクルクルと回転させていった。生地はみるみるうちにうっすらと焼き色の付いた、たこ焼きに姿を変えて行った。
「ふわぁああ」その様子を見ていたリーヴァは瞳を輝かしながら見つめた。
これで焼いていくのかと思いきや、店主は更に生地を流し込んだ。そして火加減を調整しながら、再びくるくるとたこ焼きを回転させていった。
回転するうちに、たこ焼きは綺麗な球体となり、だんだんきつね色になってきた。
すると、店主は舟皿を取り出し、こんがりと焼けた、たこ焼きを1つずつ乗せていった。
「はい、焼けたよ。マヨネーズは付けるかい?」と店主が訊ねると、鈴乃は「はい、お願いします」と答えた。
一皿に八個ずつ大きなたこ焼きが乗っている。そこに、たこ焼きソースを刷毛で塗り、マヨネーズを線状に掛け、鰹節と青のりを振り2本の楊枝を立てると「へい、お待ち!」と、店主がたこ焼きを差し出した。
鰹節が湯気と共にヒラヒラと踊っている、ソースと紅ショウガと青のりの入り混じった美味しそうな匂いが、ふわっと辺りに立ち込めた。
その時店主が、かっこよく見えた。




