りんけーじ109 お祭りの匂い
りんけーじ109 お祭りの匂い
会場は隣の東浦浪駅であり、俺たちは、電車に乗った。
電車内はやや混んで座席は埋まっていた。
みんなでつり革につかまって揺られていると、程なく隣駅に到着した。
改札を抜けると、鈴乃とあかねが待っていた。
「あら、来たわね!」俺たちを見つけると、鈴乃が声を掛けてきた。
「こんばんはー、英美里ちゃんも一緒なんだー、兄妹仲いいねー」とあかねも手を振った。
英美里はペコリとお辞儀をすると、手を振り返した。
俺たちも挨拶を交わした。
「ほーっ、2人共きれいじゃのー」凜が口を両手で押さえた。
2人を見ると共に浴衣を着ていた。
鈴乃は水色をベースに赤い花模様の描かれた生地に、淡い藤色の帯を着けていた。髪の毛は後ろでまとめた三つ編みをくるっと巻き、耳の上に付けた水色の花の髪飾りがアクセントになって、しっとりとした美しさを醸し出していた。
あかねは、淡いピンク色生地にピンク色の花模様が描かれた浴衣に、茜色の帯を巻き、帯と同じ茜色のリボンを頭に付け可愛らしかった。
「お二人とも浴衣が似合ってますね!」と、ヴァールがウンウンと頷くと。
鈴乃も「みんな、浴衣姿カワイイわね」とぐるっと見回した。
「ほぇーっ…少女化した円正寺先輩の浴衣姿ほんとカワイイですねー、何かモデルの人みたい」と、あかねがぽかーんとした顔をで見つめるので、「そ、そんなもんじゃないからっ!!」と、俺は、恥ずかしくなり、あかねの手を引っ張った。
「じゃあ、会場に向かいましょうか」鈴乃が合図と共にみんなカラコロと下駄を鳴らして歩き始めた。
夕時と言いても日差しは未だ元気で、じりじりと体に当たった。
俺たちは、楽しそうな賑わいのする人波に乗って、会場に向かって行った。
「ふーん、何か美味しそうな匂いがしますねー」えるが鼻をクンクンさせた。
「本当!おなかがぎゅーって鳴っちゃったー」ヴァールが頬を赤らめて下を向いた。
確かに、風に乗って醤油やソースが焼ける香ばしい、お祭り特有の匂いがふわっと漂い始めた。
すると、道の両端に電球に照らされた様々な屋台が現れ始めた。
「わた飴、じゃがバター、いか焼き、たこ焼き、フランクフルト、からあげ、焼きそば、ベビーカステラ、お好み焼、かき氷、バナナチョコ、りんご飴…」えるとヴァールは、通り過ぎる屋台をキョロキョロと目を輝かせ眺めながら、二人そろって涎を堪えて、まるで詠唱魔法の様に呟いていた「あーっ!」「もうっ!」「全部食べたいでーす!!!」。
夜の帳が下り始め、宵の明星が輝き始めた。
「きゃっ」あかねが声を上げた。
と、その時、よどんだ蒸し暑い空気の中を、何の前触れも無く、ゴオッと、激しい突風駆け抜け、屋台の上に連なる提灯の灯りと、屋台の電球が激しく揺れ、光が乱舞する幻想的な光景が広がった。




