りんけーじ105 連関天則とラプラスの悪魔
りんけーじ105 連関天則とラプラスの悪魔
「お、お前は!?円正寺!」岸松京子は、俺の方を指差して固まった。
「はい、円正寺です!」俺は答えた。
「おかしいな、最近疲れが溜まっているのだろうか…」そう言うと、岸町京子は目を擦った。
「さっきは、男の方の円正寺じゃなかったか?」俺に向かって岸町京子は怪訝そうに言った。
「えっ!?私、円正寺…紗那ですけど!何か?」俺は女性化していることを、慎重に確かめつつ答えた。
「う~む」と、岸町京子は言うと、ツカツカと俺の方に来て、屈むと机の下をきょろきょろと見回した。
そして、俺の周囲には誰もいない事を確認すると、頭を掻いた。
「ど、どうやら疲れが溜まっているらしいな…、すまんが今日は帰る事にする」そう言うと、岸町京子はコメカミを押えながら、よろよろと部室を出て行った。
「あ~あ、先生お気の毒に」鈴乃は、同情した顔をしていた。
「でも、このままじゃ、まずいわね。いつ性別が変わるは分からないから」鈴乃は顎に手を当てた。
「そうですね」あかねも不安気な顔をしていた。
「ドラゴンの力で何とか、ならんものかのう、える?」凜はえるに尋ねてみた。
「そうですね、連関天則を使えば何とかなるかもしれませんね」えるは、人差し指を出した。
えるの説明によると、俺が男である間は、男としての事象が展開され、女である間は女としての事象が展開され、これもある意味パラレルワールドの様なものらしい。事情を知っている異世界探検部員はラプラスの悪魔の魔力が及び連関天則の例外になるらしい。
「ラプラスの悪魔ですか…」ヴァールはその名を聞くと顔を曇らせた。
「何か、心配事でも?」鈴乃はヴァールの顔を覗き込んだ。
「因果を統べるラプラスの悪魔が、その触手を伸ばしてくるとなると…」とヴァールは言いかけ「いえ、わたしの取り越し苦労かも知れません」と、首を振ってニコリと笑った。
「ふ~む、では、今のところ取り得る作は、えるの連関天則がよい、と言う事じゃな」凜は、鈴乃に確認した。
「そうね…」と鈴乃は慎重そうに言い「それしかないわね、円正寺君はどう思う?」鈴乃は俺を見つめた。
俺にもよくわからない。神だか悪魔だか知れないが、くしゃみにより性別が変わったとしても、それによる影響を最小限に、食い止められるのであれば、それにすがるしかない、俺の性別が変わっても、その時点での世界では、それが至極当然であると言うのであれば、先ほどの岸町京子の様なケースでも慌てる必要はない。ラプラスの悪魔とやらが多少気にはなったが、今の時点では何とも言えない。と言う結論に達し、頷いた。
俺のリアクションを確認した鈴乃は「みんなどう、えるの、連関天則を使う事に反対する人はいる?」と、確認した。
誰も異論を唱える者はいなかった。




