魔獣そして魔法
この国には数多くの魔物が存在する。
スライム、アンデット、ドラゴン等
例を挙げてはキリがない程である。
この魔物達は国の脅威だ
魔物が1度、街や村で暴れれば
甚大な被害が出る
それを危惧した人間達は
魔物を絶滅させる事を決意した。
しかし、只の人間如きが
魔物に勝てる筈も無く
討伐に向かった人間達は
返り討ちに会い、絶滅した。
そして彼等は理解した
自分達はこの世界で
゛最弱の生き物 ゛なのだと。
それから、彼等は知恵を身につけた
それは、魔物に対抗するのではなく
魔物から逃げる為に必要な事だったからだ。
そして、それから時は経ち
2000年が過ぎた頃
ある人物が歴史的な発見をした。
「炎の加護よ、我に力を貸たまえ
゛フレイム!! ゛」
彼がそう唱えると
手の平から僅かではあるが
炎が飛び出した
「やはり!!これだ!これさえあれば我々は魔物に臆する事はなくなる!」
その歴史的発見こそ…
ーーーーー魔法であるーーーーーー
それから時は経ち
西暦4200年
森林深くで
ある少年が魔物
ビッグジャイアントの群れに
囲まれていた
「くそっ!囲まれた!」
ビッグジャイアントの群れは
今にも襲い掛かりそうな状態である
「やるしかない…よな」
少年は額から零れた
汗を拭い詠唱を始めた
「我に力の加護を与えたまえ
雷帝の抑止よ!!」
すると彼の周りに
微弱な雷が発生し始めた
それと同時に
ビッグジャイアントの群れが
一斉に襲いかかって来た
少年は天高く手を掲げ
こう唱えた
「滅尽雷波!!!!」
雷鳴が鳴り響き
天から雷の雨が
ビッグジャイアント目掛けて
降り注いだ
「「「ガァァァァァァァァァァ」」」
雷が直撃した
ビッグジャイアント達は
ピクリとも動かなくなった
「…倒…せた…」
少年は魔力が底を尽き
地面に崩れ落ちた
「魔力が底を尽いたみたいだ…
体に力は…入らないよね…
仕方ない…少し危ない気もするけど
ここらで休憩でもしよう…」
そう言い少年は1時間ほど
地面に背をつけて
休んでいた
「魔力も歩ける程度には回復したし
…そろそろ国に戻らなきゃ」
そう言い彼が腰を上げた瞬間
後方の茂みから数十匹程の
魔物達が一斉に
姿を現した
「なっ!この数は対処しきれない!」
少年が身構えると
魔物達は距離を縮めてきた
しかし
魔物達は少年に見向きもせず
少年の後方へと
逃げるように去っていった
「助かった…のか?」
少年が呆然と立ち尽くしていると
魔物達が出てきた方から
地鳴りの様な足音がなり始めた
「次から次へと…何だ…この音は?」
地鳴りのする方へと
目を向けていると
巨大な頭
鋭い牙や爪
長い尻尾
そして羽を生やしている
魔物が姿を現した
「この魔物は…間違いなく…」
少年の体は震え
体中から大量の汗が流れ始めた
そして少年は一言
「上級魔獣…ガラルドラゴン…」
この世界には
下級魔獣
中級魔獣
上級魔獣
そして
シークレットモンスターと言う
難易度分けがされている
少年が先程
戦闘していた
ビッグジャイアントは
この位では
下級魔獣に位置されている
そもそもこの森には
上級魔獣は存在しない筈なのだ
中級魔獣すら居るかどうか分からない
それくらい低階級向けの森だ
つまり彼は…
「…運が悪すぎる」
何を持ってしても勝つことは出来ない
絶体絶命である
そしてとうとう
ガラルドラゴンの眼が
少年を捉えた
そして少年を絶滅させるべく
膨大な量の魔力を口に含め
ブレスを放った
「ッ!!やばい!」
少年は咄嗟に避けようとするが
彼が避ける事はできる筈もなく
ブレスは的確に飛んできた
(あぁ…僕はここで死ぬのか…)
少年がそう覚悟を決めた時
「諦めるな」
はっと少年が目を見開くと
目の前に見知らぬ人が
立っている
そしてガラルドラゴンから放たれた
ブレスを粉々に切り裂き消滅させた
「…だれ…?」
少年がそう聞くと
謎の人物はただ一言
同じ言葉をもう一度
「…諦めるな」
対面にいる
ガラルドラゴンは
もう一度同じ
ブレスを放とうとしている
少年は慌てて声を上げた
「あの魔物は上級魔獣ですよ!
早く逃げないと!」
謎の人物にそう伝えるが
彼はガラルドラゴンの方へと
向かっていった
それも目に見えない程の速さで…
そして一言
「黒羽・参ノ太刀」
彼がそう唱えると
ガラルドラゴンの頭部は
消え去り
既に命を狩り取られていた
(…凄い…なんて人だ…
あの上級魔獣をたったの一撃で…)
少年が彼の剣技に見惚れていると
謎の人物は少年の前に立ち
手を差し伸べ
名を尋ねてきた
「君、名前は?」
「ぁ…ぁ…
ハッ!すみません!
僕の名前は
斎賀真城と言います!
この度は危ない所を助けて頂き
ありがとうございました!」
「…そうか…斎賀真城か…
真城君王国まで送っていこう
もしかしたら
まだ上級魔獣がいる危険性もある」
彼は王国まで送ってくれると提案してきてくれた
本来ならばこれ以上迷惑を掛けたくない
真城だったが
彼の言う通りまだ
上級魔獣が潜んでいるかもしれないという
恐怖と、通常の魔物ですら今の状態じゃ
倒せるか分からないと言う危機感で
彼の提案を素直に受け入れることにした
「すみません…よろしくお願いします!」
「あぁ…では行くぞ」
「はい!」
真城は彼の後に続き
王国へと歩みを進めた。