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DESIRE chronicles  作者: 縁迎寺
enigmatic DESIRE
2/17

Part.2 帰り、還られ

 警備兵たちを殲滅して、私は再び合流ポイントに向かう。


『驚いたな。いやあ驚いた。まさか殲滅させるとは。君のその人間離れした体術は非常に興味深い。詳細を教えてくれないか?』

「無事にここから撤収したらいくらでも話してやる。ついでに私たちのこともな。」


話しかけてきたAIに対応しているうちに、合流ポイントである5階にたどり着いた。


「遅かったっすね班長。…ああ、戦ったんですね?」

「遅いぞステラ!お前らしくもない!大事ないか?」


ギリースーツの小男と大型銃を背負った男が私を出迎えた。


「悪かったなヴィシャル、ヴァーミリオン。別に何事もないから心配するな。ところでハカセはどこだ?」

「先にターミナルに行かせた。ヨシュアとアゼカを護衛につけてあるから心配はないはずだ。俺たちも早く行くぞ。」


私の問いかけにヴァーミリオンが答える。ハカセは先に行って撤収の準備をしてくれているらしい。早く行ってあげなければ。


「ところでその…趣味の悪そうなタブレットは何です?」


ハカセの下に向かっている途中にヴィシャルが聞いてきた。そりゃあ気になるよな。


「今回の回収物だ。よくわからないけどAIが入ってる。何の役に立つかはわからないけど何もないよりはマシだろ?」

『聞き捨てならないな。よくわからないとはなんだ。何もないよりはマシだと?言ってくれるじゃないか。後で色々聞かせてもらうぞ。』


私の返答にAIが反応してきた。やけに人間臭いと思っていたが、こんなしょうもないことに反応してくるなんて思ってなかった。


「…役に立つかどうかはわからないけど、AIとしてのクオリティはかなり高いですね。」


ヴィシャルは少しだけ呆れたように返してきた。こんなやり取りをしていると、後ろから大人数が走ってくる音が聞こえた。少し振り返ってみると、かなりの数の警備兵が追ってきていた。


「賊ども止まれ!撃つぞ!」


後ろで警備兵が叫ぶ。


「だそうだ。ヴィシャル、頼んだぞ。」

「またっすか…。取りあえずゴーグルの準備しておいて下さい。」


ヴィシャルはそう言うと立ち止まった。私とヴァーミリオンは懐からゴーグルを取り出し、装着する。


「何だ?あのギリースーツ急に立ち止まったぞ?」

「諦めたのか?」


警備兵達は急に立ち止まったヴィシャルに少し戸惑っている。


「諦める、ねえ…。諦められたらどれだけ楽だったか…。」


ヴィシャルはそう呟いた。呟くと同時に彼の目が黄色く光り、彼の周りから黒い霧が立ち込める。霧はみるみるうちに広がっていき、遂には辺りを覆い尽くした。


「何だこの霧は!?」

「見えない…何も見えないぞ!」

「暗視機能を起動しろ!そうすれば見えるはずだ!」

「既に起動しています!ですが何も見えません!」


警備兵達は明らかに混乱している。


「…ブラック・アウトで踊ってろ、俺は先に行くけどな。」


ヴィシャルはゴーグルを装着し、逃走していった。

 ヴィシャルに警備兵達を任せ、私とヴァーミリオンはハカセと、ヴァーミリオンのぶかであるヨシュアとアゼカの下にたどり着いた。


「まったく…、遅いではないかバカ者が。あのチビはどうした?」

「追手の足止めですよ。すぐに追いつくでしょう。それよりもデミア博士、準備はできていますか?」

「当り前よ!奴らが転送先を見られないように自壊プログラムも仕込んでおいた!久しぶりだったとはいえ簡単な作業だったわ!しかし何故ワガハイがこの作業を…。奴は一体どこに行ってしまったんだ…。」


ハカセが何か言っているうちにヴィシャルがやってきた。


「お待たせしたっす。今頃ブラック・アウトで戸惑ってるところでしょうから早く行きましょう。」

「まあいい。お前たち早く装置の上に乗れ!すぐに動かせるぞ!」


私たちは言われるがまま装置の上に乗った。私たちが乗ると、ハカセが装置の電源を入れる。


『このたびは転送機のご利用ありがとうございます。なお当機は一方通行となっておりますので、お忘れ物、欠員がございませんようにお気を付けくださいませ。認証レベル、転送先は登録済みでございます。すぐに転送される場合は、コンソールの赤いスイッチを押してください。』


このアナウンスが終わる前に、ハカセが赤いスイッチを押した。すると装置全体が光に包まれ、私たちの姿はその場から消えた。


「やっと追いついた…。賊はどこだ!?」

「あの転送機を使って逃げたのか!?すぐに行き先を辿れ!そこが奴らの拠点だ!」


何も知らない警備兵たちは転送機へと近づいた。


『よyyyyようこそ、転そssss送システムへ。当しssssssシステムのご利用の際には認証レベルを提示、ていじテイジ提示願いますすすすす____________使わせてくれてサンキューな!以上、通り屋でした!』


転送機はバグったような音声を再生した後、ハカセが仕込んだ自壊プログラムによって派手に煙を吹きだしながら電源を落とした。


 研究所から転移してきた私たちは気が付くと朽ちかけた廃屋の中に立っていた。横を見てみればキョロキョロと辺りを見回しているヴィシャル、少し呆れたような顔をしているヴァーミリオン、戸惑っている様子のヨシュアとアゼカ、そして首をかしげているハカセがいた。


「ここは…、ちょっと違うっすね…。」

「デミア博士…、久しぶりで勘が鈍っているのはわかりますけど…。」

「いやあすまん…。でもここは拠点近くだから特に問題はないはずだ。さあ帰るぞ。」


ハカセがそう言って廃屋のドアを開けると、その先には廃墟となった、しかし未だ朽ちていないビルがそびえ立っていた。紛れもない私たちの拠点だ。


「やっと帰れたね…。ヴィシャル、ヴァーミリオン、ヨシュアとアゼカ、ハカセ。みんなお疲れさま。今回の回収作業は大成功だ!」

『確かに大成功だな。だがそれは撤収という面だけであって回収としては大成功とは言えないのではないか?』


私が成功を祝した言葉を皆に投げかけると、AIが水を差してきた。なんと空気の読めないAIなのだろう。何も今でなくともいいだろうに。こうして私たちの回収作業は、何とも言えない空気の中終結した。


『ところでステラ?先ほどの件、俺は忘れていないからな?』


この後AIに数時間問い詰められた。


 その日の夜、ヴァーミリオンとヴィシャルは共に茶を嗜んでいた。と言ってもヴァーミリオンはコーヒー、ヴィシャルは白湯である。そしてどういうわけかヴァーミリオンは疲れ切った顔をしていた。


「…なあヴィシャル、お前って作業後には絶対白湯を飲んでるよな。…それって美味いのか?」

「そうですね。やっぱり作業後はこれに限ります。そういうヴァーミリオンさんはいつもコーヒーですよね。しかも大して美味しくないインスタントの。なんでそれをずっと飲んでるんですか?コーヒーだったらステラさんがたまに行ってる店の奴を飲めばいいじゃないですか。」

「俺はこれしか飲まないって決めてるんだよ。これ以外はコーヒーと認める気は無い。それよりお前も白湯ばっかりじゃなくて、味の付いた物を飲めばいいじゃないか。」

「味がついてるものは得意じゃないんです。舌がおかしくなりそうで。だから俺はこれなんです。」


何かとこだわりの強い2人は、それ以降黙って飲み続けた。ヴァーミリオンは途中で疲れて眠ってしまい、その後ヴィシャルが部屋まで運んで行った。


どうも、縁迎寺(エンゲイジ) (ムスビ)です。第2話をご覧くださってありがとうございます。ここでは作品内の色々なことを簡単に解説していきたいと思っています。今回はこの作品の世界観について軽く説明していきます。この作品は一つの巨大な塔型都市を舞台に繰り広げられています。作中に登場した転送機などが各階層ごとの移動手段となっているぐらいの科学力があります。と言っても、全てが転送機というわけでもなく、長い階段やエレベーターなどの移動もあります。転送機が壊れたら困りますからね。もう少し詳しい塔の情報は、追って出していこうと思います。それでは今回はこの辺りで締めさせていただきます。また次回お会いしましょう。

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