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DESIRE chronicles  作者: 縁迎寺
infected DESIRE
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Part.6 再起反撃

 まずは現状を把握しよう。俺はディーテからこの場所に転移してきた。ただし今回は自分一人での、正確に言えば自分と何でかずっとくっついてきているウサギの一人と一羽だ。ラプサはこの場にいない。恐らくディーテに置き去りになってしまったのだろう。戦う力を持っていないであろう彼女を一刻も早く救いに行ってやらねばならない。しかしここがどこであるかによって、何をすべきなのかは変わってくる。少なくともここは居住区ではない。であれば、近くにある秩序使の支部に駆け込んでディーテへの入獄許可を得ることはできない。


「どうすればいいんだ…。俺は戻ることができるが…、アイツとの約束は果たせないじゃないか…。」

「失礼。君、何か困りごとかな?」


考え事をしていた俺の肩を、後ろから誰かが叩いた。少し驚きながらも振り返ると、そこには高級そうなスーツ姿の男が立っていた。


「ふむ…。君は秩序使だね?こんなところで何をしているんだ。ここは秩序使の管轄ではないはずだが?」

「あの、ここは…?」

「ここはシボラだよ。私を見てわからないということはかなり混乱しているようだね。私はキスタ=ドラードだ。知っているね?」

「…ああ、そうでした。すみません。少し混乱していたようです。」

「それならよかった。それよりも君は何か困っているようだね。さしずめ何処かの階層でやり残したことがある、といったところかな?」

「何故わかるんですか!?確かにそうですけど…。」


驚いた俺が尋ねると、キスタは笑いながら答える。


「ほう、どうしてと聞くか。私は経験上困っている理由を悟ることが得意なんだ。とにかく私なら君の力になれる。ついてくるがいい。君の望みをかなえてやる。」


キスタはそう言うと、目の前にある建物に入っていった。俺も彼の後に続いて建物に入った。


 キスタの後についていくと、彼はその建物にあるセキュリティを次々と解除して進んでいる。流石は管理者といったところか。そうして進んでいった果てに、俺はこの建物の一番奥に位置しているであろう部屋に辿り着いた。その部屋には、9機の転送機が設置してあった。


「君の行きたい階層を教えたまえ。すぐに転送してやる。」

「…この部屋は?」

「説明せねばならんか…。ここは通称『転送部屋』だ。ここに在る転送機はそれぞれが各階層に通じている。」


俺は驚いていた。転送機自体は珍しいものではないが、このように所狭しと並んでいる様は見たことがない。驚いている俺をよそにウサギは腕の中で寝息を立てている。キスタはウサギに目をやると、少し目を細めて俺に言った。


「なあ君。君が抱えているそのウサギはブロセリアンドに生息しているものだろう?何故君がそれを抱えているんだい?そもそも君はどうやってここに来たんだい?ここへの転送機が動いたというログも無いんだが…。」

「ああそれですか…。信じられないかもしれないですが、俺は転移してきたんです。最初はザナドゥ、その時は仕事場に向かっている最中でした。そこからまずはアガルタに転移して、そこで会った奴としばらく一緒に転移を続けていました。そこで殺されかけた時にブロセリアンドに飛んで、そこでそのウサギが付いてきました。」

「随分と愉快な転移道中だね。殺されかけたっていうのが気になるけど、まだあるのだろう?」

「そうですね…。それでブロセリアンドで爆破されそうになった時に今度はイラプセルに転移しました。転移した時に妙な夢を見たんですが、その後は特に異常のないイラプセルでした。そこで暴漢に殴られた時にディーテに転移しました。」

「妙な夢?それはどんな夢なんだ?わざわざ言うということは何か引っかかることがあったのか?」

「はい…。できれば思い出したくないんですが…、人が、人を食べていたんです。彼らは皆獣のようで…。でもその光景が、俺にはとても懐かしく思えてしまったんです…。だから俺は…、それをただの夢として片づけることができなかったんです。」

「そうか…。聞かせてくれてありがとう。それはそれとして、君が行きたいのはディーテかな?」

「ええ、そうですけど…。そうだ、一つ聞いてもいいですか?」

「ん?どうかしたのか?」

「デザイアを使えなくする道具って知ってますか?あとは、それの解除方法も。」


俺が聞くとキスタは、近くの台に置いてあったナイフのような機械を手に取った。


「君が言っているのは恐らくロックエッジのことだろう。ならばこのオープンエッジを使うといい。これを当てながらゆっくりと引き抜け。一気に引き抜くと出血するから注意だ。しかし今の時代にそんな古いものが使われていることが驚きだな。」


キスタはオープンエッジを俺に渡すと、転送機のスイッチを入れた。


「さて、そろそろ行きたまえ。私も直近に控えている要件があるんだ。…うまくいくと良いな、アトラ君。それと、そのウサギは後でブロセリアンドに帰しておいてやる。」

「はい!あの、色々とありがとうございました!」


ウサギを渡し、転送機に乗り、転送開始を告げるアナウンスが鳴る。転移の直前、俺には一つの疑問が浮かんだ。


「そういえば、貴方はどうして俺の名前を知っているんですか?貴方に会ったことは無いと思うんですが…。」

「…また今度教えてやる。健闘を祈るぞアトラ君!ついでに独房エリアのロックも解除しておいてやる!」

「えっ!ちょっと、キ___!」


言い終わる前に、俺はディーテの独房エリア入り口に転移していた。周りを見渡しても職員はいない。そして独房エリア入り口のゲートも開いている。オープンエッジを握る手に力が入る。待っていろ、ラプサ!


お久しぶりの縁迎寺です。第6話をご覧いただきありがとうございます。この先も気分のままに執筆させていただきます。なので毎日の更新は難しいと思いますが、続行はしていきます。なのでこの先もご覧になってください。それではまた次回お会いいたしましょう。

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