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DESIRE chronicles  作者: 縁迎寺
infected DESIRE
12/17

Part.2 災来転移

明日から投稿時間が不定になります。勝手をお許しください。

 そんなわけで俺は通り屋の鍵師であるラプサと共に行動することとなったわけだが、如何せん相手は正体不明である。それに、手を組んでいるこの女は犯罪組織である通り屋の人間だ。表面上は協力するそぶりを見せているが、実際には自身の目的を果たした後は俺のことを用済みと判断し消しにかかるかもしれない。油断はしていられない。


「それで、外でうろついてるあの化け物は何なんだ?」

「ああアレ?アレはこの街にずっといるんだ。街からは出てこないから危険じゃないんだけどねぇ。こうやって入っちゃうとこのザマだよ。」

「どんな奴なのか知ってるか?」

「そんなの知らないよ。でもアレはそんなに強くないんじゃない?何なら試しに殴って来れば?」


随分と無責任なことを言ってくれる。だがやってみなければわからない、というのもある。


「いいだろう。ちょっと待ってろ。試しにやってみる。」


俺はそう言った後建物の外に出た。すると近くに化け物がいて、襲い掛かってきた。俺はベルトのホルスターに収めてあった拳銃を取り出し、化け物を狙って引き金を引いた。弾丸は化け物の頭部に命中し、化け物は大きくのけぞった。しかし倒れる気配は無い。しかも先程と変わらずこちらに飛び掛かってきた。どうやら効果も無いようだ。


「やっぱりダメじゃないか!どうすればやれるんだ。」


そう叫んでいる間にも化け物は襲い掛かってくる。飛び掛かってきた化け物へカウンターを決めるように胸部をナイフで刺した。薄いガラス板を割ったような感覚を得た後、化け物が急に膝をついた。見るとナイフが刺さっている場所から、無色の結晶のようなものがこぼれ出ていた。そしてこぼれ出る結晶が小さな山を形成するほどになった頃、化け物がガラスが割れたようなパリンという軽い音と共にはじけ飛んだ。そこにはもう化け物は存在せず、結晶の小山に埋もれた俺のナイフがあるだけだった。


「これは倒せたってことでいいのか?無我夢中でどこを刺したのか分からなかったが。」


何かよく分からなかったが、取り敢えず俺はさっきの建物に戻ることにした。戻るとラプサが暇そうに椅子に腰かけていた。


「お、帰ってきた。どう?倒し方わかった?」

「ああ。どうやら胸部を刺すと無力化できるらしい。」


俺がそう言うと、ラプサは拍手しながら立ち上がった。


「おっ、流石だね。正確に言えば『胸部にあるガラス質の部分』を『鋭い刃』で『素早く刺す』が正解だよ。」

「お前!知っているんじゃないか!!何故さっき教えなかった!?」

「いやいや。私が言ってもどうせ信用しないでしょ。だったら自分でやらせた方がいいかなって思ってね。」

「いやだからって。」

「とにかくこれでわかったでしょ。あの化け物はそんなに危険じゃないの。」

「わかったが。では何故この街は危険地帯とされているんだ?」


俺がそう尋ねると、ラプサは少し間を置いてから話し始めた。


「確かにあの化け物だけだったらこの街はそんなに危険じゃない。それだったら通り屋とか王国がとっくに制圧してる。ここを危険地帯にしてるのは。」


彼女がそこまで言ったところで、遠くから地響きのような音が響いた。その音はだんだん近づいてくる。


「何だ?」

「!!まずい!こっちに来る!!」


彼女が叫び終わらないうちに、建物のドアが盛大に砕け散り、塵が舞い上がる。舞い上がった塵が晴れると、そこには身の丈以上に巨大な槍を担いだ大男が立っていた。男の目は黄金に輝いており、明らかに正常ではない。


「な、何だこいつは!?」

「そんなこと今はどうでもいい!!とにかく逃げるよ!!」


彼女は叫ぶと、大男の真横をすり抜けて走って逃げた。茫然としていた俺は、しかし次の瞬間には我に返った。


「おい待て!俺を置いていくな!!」


俺は彼女の後を追おうとしたが、不意に大男がこちらを向いた。


「ウ゛オオオオオオオオオオオ!!!」


大男が咆哮を放った。あまりの声量に耳を塞ぐ。大男が殴りかかってきた。大振りの殴りなので、避けるのは容易かった。何かが砕ける大きな音がしたので振り向くと、大男が殴りつけた壁が崩壊していた。もし自分に当たっていたら、と考えるとゾッとする。幸いにも大男は俺の後ろにいる。俺は急いでラプサの後を追った。全力で走っているとラプサに追いついた。


「アトラさん遅かったね。」

「一体何なんだアイツは!もしかしてアレが…!」

「そう。アレがこの街を危険地帯にしてる。どこから来るかわからない上に一回見つかったらしつこく追ってくる。」


彼女がそこまで言ったところで、後ろから地響きが聞こえた。


「ウ゛オオオオオオオオオオオ!!!」

「…こんなふうにね。…走って!!」

「またかぁぁぁ!!」


俺たちは再び走った。後ろからは槍を構えた大男が追ってくる。追いつかれたらあの槍の餌食になるのだろう。そう思っていると大男が槍を投げてきた。大男の身の丈よりも巨大な槍は、俺の頬を掠めて前方の廃ビルに飛んで行った。槍が飛んで行った廃ビルは音を立てて崩れ落ちた。


「うわ…。聞いてた以上にとんでもないやつだな…。あっ!」

「おい!大丈夫か!?」


ラプサは足元の瓦礫に気付かずに転倒してしまった。俺は思わず手を伸ばした。


「何してるのアトラさん!逃げないと貴方が…!」

「目の前で困っている奴を見捨てるほど冷血じゃないって言ったよな!そういうことだ!」

「バカじゃないの!?貴方まで死んだら意味ないじゃない!」


大男はすぐそばにまで迫っていた。俺は覚悟を決め、目を閉じた。…おかしい。何の痛みも衝撃も無い。俺はゆっくりと目を開けた。すると目の前には見渡す限りの大自然が広がっていた。


皆さまこんばんは。縁迎寺(エンゲイジ) (ムスビ)です。この度は第2話をご覧いただきありがとうございます。さて今回は秩序使についてお話しします。秩序使はマグナ・バベルの治安維持組織です。監獄区ディーテに本部を置き、監獄長(ヘルズ)がトップを務めています。秩序使の階級は、スタートラインであるアンヘルズ、優れたアンヘルズであるプリンシパルズ、アンヘルズたちを束ねるヴァーチェス、特殊部隊グリゴリに所属するルチフェローズ、そしてトップを補佐するセラフに分かれています。アトラの階級であるヴァーチェスはプリンシパルズの中でも特に優れた者が就く地位です。なのでアトラが言っていた「キャリアはそれなりに積んでいる」というのはあながち間違いではないのです。自分で言うのはどうだろうと思いますが…。それでは今回はこの辺りで締めさせていただきます。それではまた次回お会いいたしましょう。

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