ヘレンさんの記憶
お久しぶりです。
熱い日が続き体調を壊していませんか。
いつも
ありがとうございます。
続き書き上がりました。
よろしくお願いします。
主に過去回です。
結構
鬱展開だったりします。
僕と
ヘレンさんの間で
魔力が循環しているのを感じる。
同時に
魔力と一緒に
ヘレンさんの記憶が流れ込んできた。
……これは
過去の体験か。
黒い霧の向こう側に
少しくぼやけているそれ。
僕はそこへ
そこへ吸い込まれるように
導かれていく。
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彼女とは
セメギス帝国の研究施設で出会った。
私が十歳になる頃
帝国では政権が変わり
亜人族の人権が奪われ
私はヘレンではなく
隷属の首輪をつけ
34号として
孤児院から
その施設に送られた。
そこでは
亜人族は
動物として扱われ
様々な実験をさせられた。
私に課せられたのは
魔神族の魔力量を持つ人間を生み出すこと。
そのために
毎日の様に血を奪われ
怪しい薬品を注入された。
絶望しかない日々の中で
出会った
希望の光が彼女だった。
最初に会った時の
彼女の印象は
ずいぶん痩せていて
今にも折れそうだと思った。
年齢は
十二から十四歳ほど
身長は私よりも低く150センチメートルくらいだろうか。
髪は漆黒の闇の様に黒く腰の辺り
目はガーネットの様な赤
背中には蝙蝠の様な翼と
お尻には細長く先端が洋梨の様に膨らんだ尻尾
それが淫魔族の少女フレイだった。
彼女は自分を作られた存在だと語った。
尻尾から分泌される体液を採取するため
人為的に作られた
純血種に極めて近い『品種』だと。
その体液は上級のポーションになるのだと
それを採取するためだけに生かされていると。
彼女は私に語った
淫魔の力を使い
施設に囚われている亜人族を
ゆくゆくは世界中の人間達と
亜人族の差別を無くして
自由になること
それが生きる望みだと。
彼女は
たびたび深夜に淫魔の能力を使い
私の部屋を訪ねてきた。
初めは他愛もない話だったけれど
そのうちに
収容された亜人族を救出するため
帝国に敵対する国々が協力し
準備を進めている事を聞いた。
その話がどこからもたらされたものか
彼女は深く語らなかったけれど
言葉の裏に滲み出る確固なものに
私も生きる希望が湧き
どんな実験も耐えられた。
同じような目に遭っているはずの彼女だが
私の部屋を訪れる時は
本当に楽しそうで
彼女の存在は
私の心の中で大きくなって行った。
ある日私は
彼女の脱出計画の
力になれないか
聞いてみた。
一瞬。悲しそうな
困った顔をしたけれど
必死に説得し
私の覚悟が本物である事を悟った彼女は
渋々参加を認めてくれた。
仲間になれた気がして
本当に嬉しかった。
それから少しして
戦争が始まり
戦火が迫ったある晩に
亜人族の圧政に反対する勢力が
施設を襲撃
私達はフレイが手筈した通り
囚われていた亜人族を纏め
脱出を謀った。
計画は成功し
一人の死者もなく
逃げ出す事に成功したが
しかし
そこにフレイの姿は無かった。
彼女は皆が脱出した事を見届けると
『やり残したことがある』と
単身で
まだ帝国兵が残っている
施設に引き返したという。
嫌な予感を抱きつつ
慌てて彼女の跡を辿った
私が
見たものは
数十人の兵士が取り囲み
誰かを拷問する光景だった。
その中心には
淫魔の姿で捉えられ血を流す彼女の姿だった。
服は剥ぎ取られ
ビロードの様に美しかった羽は
途中から無残に切断され
皮膜はズタズタに切り裂かれていた。
鞭のように長かった尻尾も
もぎ取られ
根元を残して無くなっていた。
白く美しかった
体は
無数の傷で赤く染まり
長かった髪も刈り取られ
散乱していた。
途端に
頭の中が沸騰して真っ白になる。
突然起こった魔力の奔流に
兵士達が気付き
私に
銃撃を始める。
無数の
銃弾が体を掠め貫くが
私は止まらない。
数瞬で
銃撃をした兵士の
あるものは火柱に閉じ込められ松明のように燃え上がり
あるものは氷の柱に閉じ込められ砕け散り
あるものは足元に現れた泥の海に沈み込み
あるものは無数の風の刃で赤い塵となり吹き飛んだ。
正気に戻ると
音を失った
明け方近くの空の下
元の施設だった場所は
大きな穴が開き、底には濁った水が溜まっていた。
吹き飛ばされた
コンクリートや窓ガラスが粉々に砕け
かろうじて残った
鉄骨は飴細工の様に曲がり
生き物どころか
動くものの姿は皆無だった。
私の腕の中には
血だらけのフレイ。
わずかに心臓の鼓動を感じる。
施設を脱出する際
救出部隊から渡された
回復ポーションを
祈りながらありったけ
彼女に振りかけるが
傷は治らない。
今持っているポーションでは足りない。
頬を何かが伝って落ち
視界が滲むが顔を上げると
私は彼女を抱き
明け方の荒野を疾走する。
誰か
誰か
お願い
この子を助けて。
喉は渇きで貼りつき
銃撃の傷で
体中が鉛のように重く熱い。
頭から流れる血で
手足が痺れて感覚が失われていく。
視界がだんだん赤から黒に変わっていく。
それでも走る。
大事な親友を助けるまでは
倒れる事はできない。
そう
強く願っていたけれど
救出された亜人族がいる場所へ
たどり着く前に
私は力尽きて倒れてしまった。
失われていく視界の中に
彼女の顔が見える。
「あなただけなら生き延びられる
だから、生きて」
の声を最後に
私の意識は暗闇に飲み込まれてしまった。
気がついた時には
救出部隊の基地のベッドの上にいた。
発見された時に
フレイの姿は無く
私は一人で倒れていたそうで
銃で撃たれた傷により、遠目では
死体と見間違えるほどの
瀕死の重症だったけれど
駆けつけた救出隊の目の前で
首に巻きついていた淫魔の尻尾が動き出し
みるみる傷が癒えてしまい
兵達を驚愕させたというのは
後から聞いた話だ。
それでもダメージは大きく
三日ほど意識が戻らなかったのだそうだ。
倒れていた
私の手には
帝国の重要な施設の場所や人員が記された
機密文書が握られていた。
彼女が命をかけて
持ち出した資料だ。
それは
最終的に
反帝国軍の勝利に貢献する事になった。
しかし
功労者である
フレイの消息は途絶えたまま。
私に命を与え守った親友は
戦場に消えてしまった。
これは
終戦後しばらく経ってから知った事実だが
彼女の尻尾から分泌される体液は
上級のポーション以上の効果を発揮したそうだ。
だが
自らの生み出した体液では
自らの体を癒す事はできないとも。
終戦後しばらくの間
私は
ユークレス王国の孤児院で働きながら
元セメギス帝国の
施設のあった荒野や周辺の集落に赴き
彼女の痕跡を求めたのだが
手がかりひとつ
見つける事はなかった。
あの傷では
生きていないのだろう。
恐らく魔獣や野犬に連れ去られたと考えるのが普通だ。
だが
心の底では諦めきれない。
死ぬ前に
ひと目
彼女に会いたい。
一言だけでいい、
いろいろな事があり
長い時間が掛かったけれど
望みは叶えられましたよと。
あなたのお陰だと
感謝を伝えたいから……
自分の文才の無さにより
スタイルが
なかなか決まらないです。
もっと伝えたい事を
簡潔に
わかりやすく
伝えたいなあと思う
今日この頃です。




