サバイバル
続きです。
「ふわぁ」
力が抜け、その場にへたり込んでしまった。
頭から狼の血を浴びて
体中、大変なことになっている。
通行人に見られたら
全裸死体かゾンビと思うだろう。
実際、冷静になって
傷を確認すれば
頭や胸には狼の爪による裂傷があり
血が流れ、腕には白い骨も見えている。
肋骨を何本か折られたみたいで
呼吸をするたびに激痛が走る。
両足にも木の枝や石が刺さり
惨たらしいことになっている。
自身の出血と
狼の血の臭いが酷く
気持ち悪くなってきた。
体を洗いたいが周囲に水はない。
早く、血を洗い流さなければ
他の動物が臭いに惹かれ、やってくる事になる。
良く、狼の尿の臭いや血の臭いは
は獣避けになると言われているが
効果は一時的なものだ。
夏に
アルバイトでお手伝いをした農家さんが、
とうもろこし畑に熊が来るため、
狼の尿を大量に購入して使用していたが
すぐ効果が無くなるとぼやいていた。
狼より大きな生き物
森の熊さんは、お腹が空いていれば
血の臭いに惹かれてやって来る可能性は高い。
さすがに森の熊さんとは戦いたくない。
死ねない体でも
食べられて
熊のウンチになるのはゴメン被りたい。
僕は、比較的無事な方の腕で長めの枝を持ち
それを杖代わりにして
時々、立木を縦にカンカンと叩きながら
水のありそうな場所へ
足を引きずり移動を開始する。
枝で立木を叩くのは
熊よけの一種だ。
熊などの動物は、普段聞き慣れない音を嫌がる性質があると
田舎の、某林業会社のバイト先の先輩から聞いたのだ。
この世界の生き物に効果があるのかは不明だが
ただ、返り血と、自分の血を流しながら
何もせず移動するよりは
ずっとましだと思う。
肝心の不死の効果だが
歩いている間に
なにやら発動して
少しすると傷が塞がったので一安心した。
さすがに浴びた返り血は綺麗にならなかったが
傷は綺麗に消えて、
爪で引き裂かれた痕も残らなかった。
これで、攻撃されて傷ついても
痛みに慣れることが出来れば
きっと生存率が高まるだろう。
痛みには慣れるのかな?
慣れないのなら根性でなんとかしなければならない。
急がなければ
初夏の昼間は長いが、
それでも山中で明るい時間は限られる。
山の尾根にあった狼に襲われた場所から
緩やかな斜面を斜めに下り
体感時間で2時間ほど歩いて
小さな川の側に到着した。
到着した場所は、丁度小さな滝壺があり
割りと広めの、結構な深さがある淵と、
漬物石にちょうど良い大きさの、石が転がっている
川原がセットになっていた。
周囲に生き物の気配がないことを確認して
川の淵の、
流れの緩やかな所に、音を立てないように入る。
大きな水音を立てれば
猛獣が襲ってくるかもしれないため、用心に越したことはない。
川の水は、
かなり深いところでも川底の小石一個一個まで確認できるほど
澄んでいて、とても冷たかった。
周囲の警戒をしながら
一通り、狼の返り血を洗い流してから
淵から上がるが
体を拭くものは無い。
体の筋肉が
体温を取り戻そうとして
ブルブルと震え出す。
恐らく唇は紫色になっているはず
太陽の光が暖かくて有難い。
何か水気を取るものがないか
周囲を見渡すと
フキと思われる大きな葉が視界に入る。
うん、どう見てもでっかいフキの葉
傘にも出来そうだ。
何もないよりはまし、ということで
何枚か調達し
フキの葉の裏側の毛が生えている方で
体を拭う。
ついでに寝床用にも大量に確保する。
川岸で
太陽の光を浴びながら体を温めていたが
日が傾き谷には夜の気配が忍び寄る。
冷え込んできたため
川沿いから少し離れた所で
寝床に出来そうな場所を探す。
少しして
枝ぶりのいい、クスの木の
少し高い所に、人が一人入れる位の洞があった。
動物、特に熊の爪痕が無いか
中に蜂や蟻の巣が出来ていないか確認してから
寝床を作った。
木の上の寝床であれば
多分、犬型や猪型の猛獣であれば登って来られない。
熊が登って来た時は・・・・・・その時考えることにした。
とにかく、眠い、寝かせてくれ。
服がなく、フキの葉だけではかなり心もとなく
眠れないだろうと思っていたが
狼戦でかなり体力と精神力を持って行かれていたみたいだ。
樹の肌のゴツゴツした感覚も気にすること無く
すぐに眠りについてしまった。




