喪失
書きあがりました。
説明回をさりげなく。
(全然さりげなくない)
長いので
適当に飛ばして
読んでも良いかも。
『コイツら早まりやがって……』
沸き上がる怒りのオーラを露わにし
それを隠すことなく額に青筋をたてたまま
隊員達を睨んでいる相方を制して
隊長である私は
対応にあたった
隊員達から報告を聞く。
各人、徹夜で事に当たっていたため
疲労の色が見えるが
情報の共有を行い
直ちに上に報告した方が良いだろう。
……
聞かなければよかった。
全ての報告を聞き終わった後
頭を抱えてしまった。
とんでもない人物、いや存在を拾い
そして失ってしまったのだ。
その人物は
砦内でも最高ランクの防御体制を誇る
最重要施設内において
警戒レベル5の防御体制を敷き
魔力封鎖を三重に行った場所へ
誰にも気づかれる事なく侵入後
魔力封鎖を倍にされたにも関わらず
簡単に脱出してしまった。
今回の魔力封鎖は
王城での非常事態における
警備体制に勝るとも劣らない
厳重さと堅牢さを有したものであったはずだ。
これだけでも
到底信じられない事なのだが
さらには
ウラキに取り付いた
ラビリンスシードを消滅させ
死の淵にあった体を完璧に癒していた。
そう、古傷と言われる昔の痕跡さえ
綺麗さっぱり消し去り
その肉体を5歳ほど若返えらせて。
しかも
先走って捕縛しようとした
隊員達が撃った
アサルトライフルの至近弾は全く効果を為さなかった。
まさに
神の力を持つ存在。
事件発生を受け直ちに
近隣の町や村にも
緊急配備を敷いたのだが
神の力をもつ少女発見の報告は無く
その後の足取りは
昨夜の騒ぎ以来
ぷっつりと途絶えたままである。
「はあ〜……」
大きなため息が漏れる。
今更ながら
軍務の規則や規定に縛られていたことが
悔やまれる。
そう、隊員達は
少女がレベル5の部屋に入った時点で
決められた手順を追い、任務を遂行しただけであり
そこに非は無いのだ。
だが
もう少し、相手を良く確認していれば
大きな損失は防ぐことができたのだ。
「隊長」
私が押し黙ってしまったため
報告を終えた隊員達が心配そうに声をかけて来た。
「いや、君たちはよくやってくれた、だが……」
言葉に詰まってしまう。
そこに
ウラキが手を挙げた。
「隊長」
「なんだ? 」
「彼女自身の言葉では、
自分は淫魔だと言っておりました
俺もその事については、あまり詳しくは無いのですが
同席いただいている、カレン女史から説明していただけませんか」
ウラキめ
私は心の中で舌打ちをする。
彼自身は、妹の件において
そちら方面は勉強しており
かなりの知識を有しているはず。
これは
若い隊員にも
事の重大さを教えるためにわざと言っている。
「カレン女史、説明をお願いします」
あくまでも公式の場なので口調はあえて丁寧に
お願いする。
そして心の中で
『あまり若い奴らを追い詰めん様に、頼む』
と付け加えるのも忘れない。
彼女は
「ふん」
と言いながら、椅子から立ち上がり
「この馬鹿どもが! 耳をかっぽじってよっく聞け! 」
と
説明と言う名の説教を始めた。
あ、これは
駄目だ。
彼女の怒りが収まる
までの間続くのだろう。
無理もないか
数十年ぶりの同族
いや、親戚の様な存在を失ったのだから
彼女の声が
会議室に響き渡る中、私は現実逃避を試みて
今更ながら
国の事を思う。
我々の所属するユークレス連合王国は
いくつかの国が集まり興された国であり
半王半民の政治を行っている。
なんでも昔、民主制に移行した所
民意という形の悪政と腐敗が蔓延り
重要な政策決定を行う事ができなくなり
機能不全を起こしてしまい
国が傾きかけた事があったそうだ。
その反省から
能力があると認められた各地方の領主に権力を与え、政治を行ってもらう代わりに
民衆はその庇護下に入る事としたのだ。
ただし、重要な政策決定には
領主と民衆の代表が協議を行い、これを決める事になっている。
領主や代表者は権力を与えられる代わりに
汚職や政治の失敗等があれば、直ちにその地位を失うという
まさに一蓮托生の政を行っているのである。
国の政治、経済状況は地理的、地域的に多少の問題は抱えつつも、概ね良好であり
周辺国とも(表面上は)穏やかに外交を行っている。
住民の生活は
魔道具の発達により
他の国と比較してもかなり文化的に豊かであり
主な産業も農産物の他に
原材料を輸入して魔道具を輸出する加工貿易が盛んである。
人口における人種構成は
人族と呼ばれる人間、獣人、エルフ、ドワーフ、その他が
全人口の98パーセント以上をしめており
構成比としては3対4対1対1対1となっている。
そのほかで確認されているのが
ヴァンパイヤと呼ばれる吸血族をはじめとした亜人族であり
それは全人口の数パーセント程度しか存在しない。
人種的な差別や偏見はなく
お互いがうまく折り合いをつけて穏やかに生活している。
余談だが
今回、森で保護した純血種であろう淫魔は
百年ほど前に絶滅しており
この国はおろか全世界中を探しても皆無とされている。
亞人は体内に膨大な魔力を持ち、稀に魔石を持つ個体もいるが
魔獣や魔物の様に魔素に侵され、人類に敵対する存在では無く
特殊な能力を持った隣人であり
彼らは総じて知識や能力が非常に高く、受ける恩恵も大きいのである。
そのため
ごく少数となってしまった、亜人たちのために世界中の国で
『亞人のための権利と保護に関する条約』を締結し
保護を行っているのである。
現在、相方がその説明し終えた辺りであり
対応に当たった者たちの顔色が悪くなっている。
そうだよな
保護しなければならない対象を
魔物と見誤り殺す所だったのだ。
弾丸は彼女を傷つける事なく
跳ね返されたが
それは結果論だ。
これは隊員達の知見不足
そして、この砦を守る上層部の
すなわち私の
教育不足である。
彼らだけではなく
自身の処分も考えなければなるまい。
なぜ
淫魔の
主人公の尻尾を切るとき
神の加護が発動しなかったのかは
次回、説明します。
要は
トカゲの尻尾と同じです。




