蘇生
順番間違えました。
改めて掲載します。
医務室のドアの前で隊長が深呼吸をしている。
無理もない、ここの主は・・・・・・
「失礼します」
覚悟を決めた隊長がノックをした後、部屋に入る。
俺もその後に続く。
手術台の脇にある机で何かしらの機械を操作している
細身でメガネをかけたプラチナブロンドの女性。
この人がこの部屋のボスであり、
この砦の司令官であるディック隊長のパートナーの
『カレン・ブラッド・ボート』女史である。
彼女は、
魔術と医療技術を融合させ、現在ある『魔術医療』を確立し、
毎年のように新たな技術開発や魔術理論や法則の発見により、
数多の国から博士号や勲章を贈られている、超天才的な学者である。
ただし、性格はかなり怖い。
彼女はこちらをちらりと見るなり一言
「状況は見ていた、死体は治せんぞ」
と睨みつける。
実は彼女には秘密があり、隊長と血の契約で繋がっているため、
今回起こった事故も既に『見て、知っている』のだ。
返す言葉もなく
黙って俯いていると
『ふぅ』とため息を漏らすと
「ウチの旦那が反応できなかったのだ、仕方ない。
大変だったな、検視は手術台で行う、そちらへ」
と労ってくれたが
悔しさで再び涙が溢れて来て、嗚咽が漏れる。
ぼたぼたと落ちる涙は腕に抱く少女の亡骸に落ち
顔を濡らすが
止める事は出来ない。
すると
少女の顔が、
いや全身が淡く光り始めた。
少女を抱いた俺の周りに
周辺にいくつもの魔方陣が浮かび
測り知れない程の魔力を溢れさせ
激しく光りを放ち、ぐるぐると回り始める。
呆気に取られていると
いきなり少女の体が
俺の腕の中から
布に包まれている右腕ごと2メートルほどの高さに
浮かびあがり
覆っていた布が弾け飛んだ。
10個ほど周囲を
ぐるぐる回っていた平面の魔方陣が
次々に合体し少女を二重に包む球形になる。
その後、少女の周りを
高速でぐるぐる回っていた魔方陣は
部屋からはみ出すほどの大きく広がった途端
いきなり収縮し、直視出来ない程の光の奔流が
部屋中に溢れ
集束し、少女の体と右腕が光を放つ。
呆気にとられて見ていると
右腕と身体は完全に結合し
身体中の傷も修復されて行く。
えぐり取られていた右胸も
綺麗に元どおりになり
少女の見た目は完全な姿を取り戻していた。
宙に浮かんでいた体は
発光が収まると重力に引かれゆらゆらと
落下を始める。
俺は受け止めるため慌てて手を伸ばす。
うまく受け止められず
2、3度私の腕の上で羽毛の様に
ふわふわと上下する少女の体だったが、
私の腕の中に収まった所で
急に重力が蘇り
腕に彼女の体重を感じた。
決して重くないけれど、重たい。
少女の顔を覗き込むが呼吸をしていないように見える。
今なら人工呼吸すれば蘇生するのではないだろうか
と思うと
彼女は『けほっ』と小さく咳をして
少量の血を吐き出した後、
『スースー』と呼吸を始めた。
少女を腕に抱きしめ、
先ほどまでなかった命の暖かさ感じながら
目の前で起こったことを信じられない気持ちでいたが
脳が、『少女が蘇生した』という事実を認識すると
視界がぼやけて見えなくなる。
ボタボタと落ちるそれが
隊長に肩を叩かれるまで
先ほどまで流していたそれとは違う
涙だとは気がつかなかった。
よろしくおねがいします。




