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華ノ探偵少女・反町友香  作者: 空波宥氷
9/27

承認欲求

主な登場人物


・反町友香(ソリマチ ユウカ

中華街に暮らす探偵少女。中学2年生。

ピンク味の帯びた白い髪に、赤い瞳を持つ。

茉莉花茶が好き。



・九重優衣(ココノエ ユイ

友香のクラスメイトであり、親友。

活発な金髪サイドテールの少女。

機械仕掛けの身体を持つ。

9


 友香と優衣は昼食を終え、校舎内へと戻った。


 そこは工学部棟で、白衣を着た、如何にもな学生たちが学園生活を送っていた。

 だが、校舎内はいつもとは違う、異様なザワつきを見せていた。

 友香たちの数メートル先には、大きな人だかりができている。



「ん?なんかあったのか?」

「さぁ……」



 2人も何があったのかと気になったが、すぐにその理由がわかった。

 人だかりが捌け、その中から注目の的となっていたシルエットが現れた。

 その影は友香たちを見つけると、



「あ!友香ちゃん!」



 手を振って、2人の元に駆け寄ってきた。

 その人物は、友香のよく見知った少女だった。



「……!ろまん!?」



 目を見開き、友香がその名を呼ぶ。

 彼女の名前は白妙夢しろたえろまん。友香たちの親友であり、天才舞台女優として世界的に活躍している英傑であった。



「久しぶり!」

「ええ、久しぶり」



 友香とハグを交わす夢。



「優衣ちゃんも久しぶり!」

「ホント久しぶりだよな。2ヶ月ぶりくらいか?」

「それくらいかも!」



 夢は優衣ともハグを交わすと、嬉しそうに微笑んだ。

 そんな彼女に、横から友香が尋ねた。



「どうしたの?今、ミュージカルの世界ツアー中じゃなかったかしら?」

「そうだよ。それでね、次は日本でやるから一時的に寮に帰ってるんだ〜」

「あら、もうファイナルだったのね。確か場所は……京都だったかしら?」

「そうそう!はぁ…横浜でできれば友香ちゃんたちにも見てもらえたのになぁ……」



 夢は残念とばかりにため息をつき、うな垂れた。

 そんな彼女を見て、友香が苦笑する。



「ま、こればっかりは仕方ないわ。チャンスがあれば絶対見に行くから」

「……!約束だよ!」

「ええ、約束」

「私も行くからな!」

「うん!」



 優衣と夢が笑い合う傍ら、友香の耳には周りのヒソヒソとした声が聞こえていた。



『おい、誰だよアレ?』『なんか妙に馴れ馴れしくないか?』『一人は九重優衣だろ?あのサイボーグの』『あの白髪の奴誰だよ』『反町友香だ。あの中華街の国立探偵』『あれがか!?』『なんであんな奴が白妙夢と一緒にいるんだよ?』



 友香が横目で人混みを見つめ、不快そうに目を細めた。


 夢は、世界で活躍する女優である。

 一方、友香は一般人どころか、裏中華街に暮らす日陰者といってもいい。

 しかし、そんな境遇など関係なく、2人は大親友といってもいいのだが、そんなことは部外者である第三者が分かるわけもない。


 その違和感とも言える不釣り合い具合に、周りの大衆は驚きという不快感を示しているのだ。

 加えて、夢は超絶美少女である。殊更に注目を集め、その度にこのような空気になるのである。

 もはや、友香はもう慣れっこだったのではあるが。


 友香は夢に視線を戻すと、笑みを浮かべ彼女に問いかけた。



「でも、こんなところで油売ってていいの?私みたいな闇市育ちといたらあなたのイメージ、傷ついちゃうわよ?」



 その言葉に一瞬、目を丸くして驚く夢。だが、次の瞬間にはその感情は消え、険しい表情をする彼女の姿がそこにはあった。



「それ、もし本気で言ってるなら怒るよ。私は、そんな風には思わないし。肩書きや外見だけ見て人付き合いを変えるなんて、虚しい人がやることだよ」



 声のトーンを数段落として、不本意とばかりに静かに語気を強める夢。

 彼女の身体は震えていた。



「縁を軽んじ、取捨選択を自在にできると思うのは愚かで傲慢なことだって、前に友香ちゃんが言ってたでしょ?」



 言いたいことは言い切った。

 夢は息を吐き、力を抜く。



「あら、そうだったかしら?」



 友香がニコリと笑い、首をかしげる。



「ええ、そうですよ。それに友香ちゃんは、私にとって大事な大事な、私のファン第1号だもん!」

「そう……嬉しいわね」



 日本中を虜にした、屈託のない笑みで笑う夢。

 友香は彼女から視線を外すと、照れ臭そうに笑みを浮かべた。

 その顔を見て、満足とばかりに夢は大きく頷いた。



(私も肯定してもらいたかったのかしらね……)



 ポツリと心の中で呟く友香。

 信じてはいるのだが、一度でいいから本人の言葉で聴いてみたい。

 一見、矛盾しているような……そんな先程の優衣の思いを、身をもって理解できた気がした。



「で?今日はどんな事件を追ってるの?」



 友香に、興味津々と瞳を輝かせた夢が迫る。

 どうやら閑話休題のようだ。

 久しぶりに会った友人と近況報告をしたいのだろう。

 そんな夢に対し、友香が困惑気味に返答する。



「え?別に何も追ってないけど……」

「え゛!?友香ちゃんが事件に首を突っ込んでないなんて……!明日は雪かも……」

「失礼ね。そんなに毎日、身の回りで事件が起きるわけないでしょ」



 驚きの表情を見せる夢。

 苦笑する友香。



「あ、そっか。言われてみればそうだね、あはは」



 コロコロと表情を変える夢。

 そんな彼女を見て友香は思った。

 彼女はやはり演技の世界に向いているのだと。


 そして、彼女と友達になれて本当によかったと。

 つくづくそう思うのであった。

・白妙夢(シロタエ ロマン

友香、優衣の親友。

舞台女優として世界で活躍している少女。

ミディアムショートにした明るい茶髪と綺麗なタレ目が特徴。

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